華為のチップ「麒麟9000s」、米制裁下でSMICが7ナノ実現か

中国の通信機器大手、華為技術(広東省深セン市、ファーウェイ)が最新スマートフォン「Mate 60 Pro」に搭載した回路線幅7ナノメートルの新型チップ「麒麟9000s」について、米コンサルティング会社などの分析で、中芯国際集成電路製造(SMIC)が中国で製造したことが判明している。

米半導体コンサルティング企業のSemiAnalysis(セミアナリシス)は、米国による対中半導体規制が敷かれる中での華為のチップ分野での“ブレークスルー”を詳しく分析するリポートを発表した。
麒麟9000sは、華為がカスタマイズしたArmv9ベースのCPUコアとGPUを採用しており、中国で先端アーキテクチャが設計された点は大きな注目ポイントだ。

米国はAMDとインテルが中国企業に各種CPUを提供することを規制しているが、英Armはいまだ規制の対象外だ。Armの中国合弁会社がArmのマジョリティを受けていないことに加え、ArmのCPU命令セットアーキテクチャ「Armv9」がArmの英本社で開発・生産されていることが理由とみられる。

麒麟9000sは、技術的な角度からみて、非常にすぐれたチップといえよう。各種テストで、性能と消費電力当たりのパフォーマンスは1~2年前のクアルコム性チップ(S888とS8G1)と同等レベルであることが証明された。搭載する通信モデムもクアルコムの現在の最高グレード製品に引けを取らない性能を実現した。これまで中国では製造能力に欠けるとされてきたRFフロントエンドチップも中国国内で生産された。

さらに驚くべきは、同等のIP(半導体の設計情報)を直接的に比較すると、SMICの7nm(「N+2」)プロセスで製造された麒麟9000sに使われているCPUコア「Arm A510」は、クアルコムが2022年にサムスン電子の4nmプロセスで製造したCPUコア「S8G1」と、性能と消費電力当たりのパフォーマンスが事実上同等レベルにあったことだ。

(SemiAnalysisの発表より抜粋)

これは、SMICのN+2プロセスが大多数の西側諸国が認識しているよりも優れた技術であることを説明している。その原因の一部は、歩留まりでSMICがサムスンをリードしていることにあるかもしれない。

麒麟9000sは、米国の対中輸出規制の下、最先端半導体を量産するために必要なEUV露光装置がなく、米国の先端的な知的財産権がない状況下で製造された中国製先端半導体であると結論できる。

セミアナリシスのリポートは米国の立場で、米商務省が昨年に定めた対中半導体規制の内容では、中国の技術的ブレークスルーを阻止することはできないと指摘。半導体供給網(サプライチェーン)の再構築が必要となり、半導体製造コストが極端に跳ね上がったとしても、さらに厳格な規制措置を追加で投入すべきとの見解を示した。

China AI & Semiconductors Rise: US Sanctions Have Failed

Tags: , , , , , , , , , , ,

関連記事