トランプ米大統領、中国による戦略分野への投資を制限

トランプ米大統領は21日、半導体やAI(人工知能)、量子コンピューティング、航空宇宙など国家の戦略的分野への中国からの投資を制限するよう対米外国投資委員会(CFIUS)に指示する国家安全保障大統領覚書(NSPM)に署名した。
国家安全保障大統領覚書(NSPM)は、外国からの投資を促進する一方で、「中国やその他の敵対国」の脅威から米国の国家安全保障上の利益を守ることが目的。中国について、「米国の資本と創造性を活用し、自国の軍事、諜報、安全保障活動に資金を提供し近代化させており、米国の安全保障に対する直接的な脅威となっている」と明記した。
覚書(NSPM)の下で、米国は「中国など外国の敵対勢力による米国の資本、技術、知識の搾取を抑制し、米国の利益になる投資のみが許可されるようにする」新たなルールを設ける。半導体、AI、量子コンピューター、生物科学(バイオテクノロジー)、航空宇宙など、機密性の高い技術分野における米国の対中投資に対し制限を課す。
トランプ大統領は声明で、「中国系企業が我々の知的財産や労働者の知識を盗み、それを共産中国に送り返すのを阻止する」と強調。さらに「我々はまた、米国企業が中国に投資を注ぎ込むのを阻止し、中国が米国を買い占めるのを阻止するための新たなルールを採用する。一方で、明らかに米国の利益に資する投資をすべて許可する」と述べた。
これらの投資規制は、バイデン前政権が2023年に発令した「特定の機密性の高い中国技術への米国投資を禁止する大統領令」を拡大したものになる可能性がある。
対米外国投資委員会(CFIUS)は、海外からの投資が米国の国家安全保障に与える影響を審査する専門委員会で、中国の対米投資が激減する原因となっている。 中国の観察者網によると、中国の対米年間投資額は2016年の460億米ドル(約6兆8691億8000万円)から22年には50億米ドル以下に減少しているという。トランプ大統領が就任早々に中国からの輸入品に関税を課したほか、今回の投資規制は米国と中国の経済的緊張をさらに高めそうだ。
中国商務部の報道官は22日、「米国のアプローチは国家安全保障の概念を一般化し、差別的で、典型的な非市場的行為であり、両国間の正常な経済貿易協力に深刻な影響を与えている」と非難。「両国間の投資交流はさらに歪められ、米国自身にとっても何のメリットもない。 米国の多くの経済団体や企業はすでに、米国の対中投資規制は、米国企業が中国市場を他の競争相手に譲り渡すことにつながる」と指摘した。