広州汽車、初の量産型「空飛ぶクルマ」を発表 価格は168万元以下

中国自動車大手メーカー、広州汽車集団(GAC、広東省広州市)は12日、香港で開催された「2025香港国際自動車およびサプライチェーン博覧会」で、自社開発したマルチローター型の電動垂直離着陸機(eVTOL)「GOVY AirCab」の量産モデルを初公開し、予想価格を168万元(約3360万円)以内と発表した。
GOVY AirCabは、2025年中に広東・香港・マカオエリアでの実証運用を段階的に開始し、26年末から一般向け納車がスタートする予定だ。
GOVY AirCabは、量産モデルとしては世界初となる無人操縦型マルチローター飛行機で、機体の90%以上に炭素繊維複合材を使用。動力システムやエネルギー供給、飛行制御、通信システムには複数の冗長化安全設計が施されており、25分間での急速充電や、低空域での自動障害物回避といった機能を備える。
広州汽車集団は24年末、新たな空飛ぶクルマのブランド「GOVY」を立ち上げ、製品「GOVY AirJet」も発表した。このモデルは最大200キロメートル(km)の飛行距離を実現し、30分間での高速充電に対応。将来的には、広汽が独自開発中の全固体電池を搭載し、最大400kmの航続距離も視野に入れている。
また広州汽車集団は、低空空域(アーバン・エア・モビリティ)事業を本格展開するため、新たなテック企業を立ち上げ、25年中には空飛ぶクルマの耐空証明(エアワースネス)取得に向けた取り組みを本格化させる方針だ。
なお、飛行自動車の商業化においては、小鵬汽車(シャオペン)も積極的に動いており、同社傘下の「小鵬匯天」が開発した分離式空飛ぶクルマ「陸地航母」は24年に初公開飛行を実施。26年には正式に市場投入され、大規模納車が始まる見通し。価格は200万元以内、年間1万台の生産体制を見込んでいる。
現在、中国では1兆元規模の「低空経済」の推進を背景に、飛行自動車市場が急速に拡大しており、吉利汽車や長安汽車など複数の自動車メーカーが参入を進めている。博覧会では、長安汽車傘下の深藍汽車が「25年末までに飛行車の試験飛行を完了する」と表明した。
グローバル市場でも、独フォルクスワーゲン(VW)やトヨタといった大手自動車メーカーに加え、米Google(グーグル)、騰訊(テンセント)、Intel(インテル)といったIT企業が参入。空飛ぶクルマはまだ発展初期段階にあるものの、市場ポテンシャルは極めて大きくなっている。
米大手投資銀行モルガン・スタンレーの予測によると、今後20年が空飛ぶクルの急成長期となり、30年には市場規模が3000億米ドル(約43兆1400億円)に、50年には9兆米ドルに達する見込みだ。その中で中国は、都市低空交通の最大市場になる可能性が高いとみられている。