TSMC、米国での半導体工場建設を加速
A16/N2チップの量産を6カ月前倒しへ

半導体受託生産(ファウンドリー)世界大手の台湾積体電路製造(TSMC、台積電)はグローバル投資戦略の見直しを進めている。特に米国では、トランプ政権からの国内製造圧力が強まる中、アリゾナ州に建設中の半導体製造拠点「Fab 21」のスケジュールが大幅に前倒しされ、A16(1.6ナノメートル(nm))およびN2(2nm)プロセスのチップの量産が従来計画より6カ月早く開始される見通しとなった。台湾・経済日報が伝えた。
アリゾナ州フェニックス近郊のFab 21は、2つの独立した製造施設として設計されており、それぞれ異なるプロセスでウエハーを生産する計画。すでにN3(3nm)プロセス工場は設備の導入段階にあり、A16およびN2の製造拠点は今年4月に建設を開始。TSMCはこの計画の完了時期を6カ月前倒しする方針だ。
この戦略の一環として同社は今年3月、米国へ1000億米ドル(約14兆5100億円)を追加投入し、米国内への累計投資額を1650億米ドルに引き上げることを発表している。これらの投資は30年までに段階的に実施され、最先端プロセスの国内生産体制の整備を目指す。
次世代プロセスノードではウエハー製造コストの大幅な上昇が見込まれる中、米国内での製造が利益率の低い顧客にとってはコスト削減につながる可能性もある。ただし、台湾で生産される同等チップと比較すると、アリゾナFab 21で製造されるチップの価格は依然として高くなると予想されており、その具体的な差額については現時点では明らかにされていない。
また、世界経済の減速はTSMCの建設計画に影響を及ぼしつつあり、米国での需要主導の投資拡大が他地域のプロジェクトにブレーキをかける可能性もある。日本の熊本工場では、日本では熊本にある第1工場が目標の生産量に届かず苦戦が続き、インフラ整備の遅れや地域社会への影響により第2工場の建設が遅延している。欧州では、ドイツの自動車産業の低迷が影響し、同地域での追加投資に慎重な姿勢が見られる。
こうした中でも、TSMCにとって台湾は依然として事業の中核拠点で、現在建設中の9つの新しい製造施設のうち4つが台湾に位置している。