米国のEDA供給制限、中国で国産化進み影響限定的か

半導体産業の最上流に位置し、「チップの母」とも呼ばれるEDA分野で、米中の技術覇権争いが一段と激化している。米国の半導体設計ソフトウェア(EDA)大手であるSynopsys(シノプシス)とCadence(ケイデンス)はこのほど、米商務省産業安全保障局(BIS)から中国向け製品に関する新たな輸出規制の通知を受け取ったことを公に認めた。
シノプシスは現地時間5月29日、2025年第2四半期の業績を発表後、BISから中国向けの新たな輸出規制を受け取ったことを明らかにした。同社はこれを受けて、25年度第3四半期および通期の業績見通しを当面撤回する。
またケイデンスが5月30日にSECに向けて提出した書類によると、BISは同社に対して、「取引相手が中国に所在、または中国の『軍事エンドユーザー』である場合」、特定のEDAソフトウェアや技術の輸出にライセンスが必要になると通知した。BISは、これらの製品が中国で軍事目的に転用されるリスクを許容できないと判断したとしている。
公式な発表はないものの、シーメンスEDAもBISから同様の通知を受け取ったとみられる。シノプシス、ケイデンス、シーメンスEDAのEDA世界最大手の3社は中国市場で8割以上のシェアを占めており、シノプシスとケイデンスだけでも中国事業の年間売上は合計100億人民元を超えている。
もっとも、今回の規制は、以前にネット上で噂された「全面的な供給停止」とは異なり、対象が「軍事エンドユーザー」に限定される可能性が高く、購入済みの既存のソフトウェアは引き続き使用できる見通し。そのため、中国の半導体産業全体への影響は比較的小さいとみられる。
中国は、米国による制裁が段階的に強化された2018年以降、EDAの国産化を強力に推進している。国内のEDA企業数は過去5年で当初の10社から120社以上に増え、18年に6.24%だったEDAの国産化率は20年に11.48%に上昇した。21~25年の中国EDA市場の年平均成長率(CAGR)は14%を超え、世界市場を大きく上回った。
中国半導体協会(CSIA)の予測によると、25年の中国のEDA市場規模は184億9,000万元(約3,709億円)に達し、世界の18.1%を占めるとみられている。