米半導体大手が韓国詣で、HBM4確保で半導体覇権競争に先手を

NVIDIA(エヌビディア)やAMDといった米半導体大手各社のトップがこの頃、相次いでサムスン電子やSKハイニックスなど韓国詣をしている。AI(人工知能)時代の「新しい石油」とも言われるメモリ、特に次世代メモリ「HBM(高帯域幅メモリ)4」の調達を安定確保するのが狙いだ。世界の半導体企業がメモリを巡って激しい争奪戦を繰り広げている。

韓国の毎日経済新聞の報道によると、米半導体大手、Advanced Micro Devices(AMD、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)のリサ・スー会長兼最高経営責任者(CEO)は3月18日に韓国を訪問する予定だ。訪問ではサムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)会長会や、韓国大手検索企業ネイバーの幹部らと会談するとみられている。2014年にAMDのCEOに就任して以来、スー氏の韓国訪問は今回が初めてとなる。

興味深いのは、そのタイミングだ。訪韓の時期は、半導体業界で最も重要なイベントの一つである米半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)の開発者会議「GTC 2026」と重なる。AI半導体の覇権を争うNVIDIAとAMDが、再びメディアの注目を同時に奪い合う構図になりそうだ。

メモリ産業の「スーパーサイクル」

背景にあるのは、AIによって引き起こされたメモリ産業の「スーパーサイクル」だ。現在、AIチップ競争は一段と激化しており、サムスン電子やSKハイニックスといった韓国のメモリー大手は、サプライチェーンの中核的存在となっている。

実際、今年2月にはNVIDIAのen-Hsun Huang(ジェンスン・ファン)CEOがSKハイニックスのエンジニアを自らもてなし、供給確保のために乾杯まで行ったと伝えられる。その直後のAMDのスー氏の訪韓は、半導体業界にとって象徴的な動きといえる。

スー氏がよく理解しているのは、もしAMDがHBM4の安定供給を早期に確保できなければ、GPU(画像処理半導体)でNVIDIAに、さらには急成長するASIC(特定用途向け集積回路)チップ陣営にも、競争で劣勢に立たされるリスクがあるという点だ。

近年、AIブームは半導体産業全体に大きな衝撃を与えているが、なかでも最も影響を受けているのがメモリ分野である。特にDRAMの一種であるHBMは、GPUと密接にパッケージングされることで超高速帯域を実現し、大規模言語AIモデル(LLM)の学習に不可欠な部品となっている。

従来、メモリ業界の景気循環はおよそ3年周期だった。しかしAIがもたらす計算需要はほぼ無限に近く、この周期構造を完全に破壊した。

2025年には米Microsoft(マイクロソフト)、Google(グーグル)、Amazon(アマゾン)、Meta(メタ)などのクラウドコンピューティング大手が、合計4000億ドル(約63兆7046億円)以上の設備投資を行い、AI計算インフラ需要を急拡大させた。26年には、この投資額が6500億ドルに達するとの予測もある。

米金融機関、Goldman Sachs(ゴールドマンサックス)の試算では、26年の世界HBM需要は前年比76%増加する。さらにAIサーバーは、従来型サーバーの8倍以上のメモリを消費するとされている。この構造変化により、メモリ需要はもはや従来の景気循環とは切り離された形だ。

メモリ不足は28年まで続く

供給側では、急増するHBM需要に対応するためサムスン電子、SKハイニックス、米Micron Technology(マイクロン・テクノロジー)の3大メーカーが、従来の汎用DRAM生産ラインをHBMへ転換している。その結果、NANDなど他のメモリ製品の供給も逼迫し、価格は急騰。スマートフォンやPCなど汎用メモリを使用する製品のコストも上昇し、単価値上げが相次いでいる。

さらにHBMは短期的な増産だけでは需要を満たせない。新しい半導体工場の建設には数年単位の時間が必要で、AI向けメモリは高い技術要件と歩留まりが求められるため、量産開始後も顧客認証などに長い時間がかかる。そのためメモリ不足は少なくとも28年まで続く可能性が指摘されている。

SKハイニックスの読み当たる

現在では、メモリ帯域そのものがGPU性能を制限する最大のボトルネックの一つになりつつある。米半導体企業と韓国メモリメーカーの関係は、業界構造に大きな影響を与えてきた。

かつてはサムスン電子が圧倒的優位に立っていたが、AIブームによって状況は変化し、SKハイニックスが優勢に立ちつつある。

両社は13年前後からHBM開発を開始し、15年からNVIDIAへ供給してきた。しかし22年末、ChatGPTによる生成AIブームが起きる直前、サムスンはAI市場を過小評価し、HBM投資をSKハイニックスほど積極的に進めなかった。

一方で SKハイニックスは高い歩留まりと生産能力、迅速な世代更新でNVIDIA向け供給を拡大。25年には営業利益で初めてサムスンを上回った。

HBM4でサムスンも巻き返しへ

長らくNVIDIAのHBM第2サプライヤーはマイクロン・テクノロジーだったが、24年末ごろからサムスンの巻き返しが始まった。

現在はHBM4の世代で再び勢力図が動いている。サムスン電子は今年2月、HBM4の初出荷を発表し、5月には量産供給を開始する計画だ。一方SKハイニックスも同程度のスケジュールで進めており、歩留まりでは依然優位との見方もある。

情報によれば、NVIDIAの次世代アーキテクチャ「Rubin」ではHBM4注文の60~70%がSKハイニックスに割り当てられる可能性がある。このためサムスン電子とAMDは協力関係を強め、巻き返しを狙っている。

一方で、マイクロン・テクノロジーはHBM4で性能・量産ともに遅れが指摘されており、HBM4の主戦場は韓国2社の直接対決になるとみている。

さらに次世代のHBM4E(カスタムHBM)競争もすでに始まっている。推論AIやカスタムチップ向けに、HBM内部にロジック機能を統合する新しい設計が検討されており、メモリ企業には高度なロジック設計と先端パッケージング能力が求められる。

汎用メモリで中国企業が存在感

AIによるメモリー需要の爆発は、中国企業にも大きな機会をもたらしている。HBMなど最先端分野ではまだ差があるものの、汎用メモリでは中国メーカーの存在感が急速に高まっている。

代表格が長鑫存儲(CXMT)だ。同社は中国最大のDRAMメーカーで、スマートフォンやサーバー、家電向けメモリを供給している。現在、世界DRAM生産能力の4%以上を占め、「半導体国産化」の重要なプレーヤーだ。さらにHBM3の試作品をすでに顧客に提供し、26年から量産を計画している。

長鑫存儲は上海証券取引所の科創板へのIPOも申請しており、約295億元(約6842億円)の資金調達を予定。評価額は1500億元に達する可能性があると市場ではみられている。

また、3D NANDフラッシュを手がける長江存儲(YMTC)も急成長している。同社はコンシューマー向けSSD(ソリッドステートドライブ)や組み込みストレージ市場で存在感を高め、現在は生産能力拡大のフェーズにある。

このほか、深セン佰維存儲科技(Biwin Storage)、深セン市江波龍电子(Longsys Electronics)など中国のストレージ企業も急成長期に入っている。

ただし、先端プロセスや高度パッケージングなどの技術課題、さらに米中半導体エコシステムの分断が進む中で、HBM分野での本格的な追いつきは容易ではない。そのため今後は、装置・材料・設計・製造・後工程を含めた産業チェーン全体の協調 が重要になると指摘されている。

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