サムスンの3ナノ半導体量産、“極小規模”か
韓国のサムスン電子は6月30日、回路線幅が3ナノメートルの半導体の量産を開始したと発表した。半導体を受託製造するファウンドリーの世界大手である台湾積体電路製造(TSMC)は3ナノ半導体の年内量産開始を予定しており、最先端プロセスを巡る競争でサムスンが一歩リードした形となるが、外界からは「極小規模の量産にとどまる」との見方も出ている。
サムスンは今回の発表資料で、3ナノ半導体の納入先となる顧客企業の名称を明らかにせず、「当初は高性能コンピューターに採用される」と説明するにとどめた。また3ナノ半導体を生産する場所は、最新設備を導入したソウル近郊の京畿道平沢(キョンギド·ピョンテク)工場ではなく、製造プロセスの開発を手掛ける華城工場だとしている。これらの情報が「極小規模量産の可能性がある」との観測の根拠だという。
一方でサムスンのサプライヤーの話として、サムスン製3ナノ半導体の納入先は、仮想通貨のマイニングを手掛ける中国企業との情報もある。仮想通貨は現在暴落しており、マイニング企業が安定した顧客となるかは未知数だ。
サムスンのライバルであるTSMCは、5ナノ製品の量産技術で先行し、サムスンとのシェア差をさらに広げている。11日付鳳凰網によると、台湾の調査会社であるトレンドフォースの統計で、2022年1~3月のTSMCの受託製造シェアは53.6%と、2位のサムスンと16.3ポイントの差があった。
TSMCは先端技術投資に力を入れており、2022年に予想される設備投資額(前年比46%増の440億米ドル)の7~8割を先端半導体に投入する見通しだ。3ナノ半導体の年内量産開始に向けて、台湾北部の新竹市と台湾南部の台南市の2カ所で新たな生産ラインの建設を同時に進めている。