中国でブレイン・マシン・インターフェイス開発が加速

中国でブレイン・マシン・インターフェイス(BMI)技術は近年急速に発展している。研究室から市場へと実装化される見通しだ。中国工業情報化部は、BMI分野の専門家をメンバーに招き、BCI技術標準の開発を推進する。

BMIは、脳の電気活動を利用して動作を制御し、微小電流を通じて脳細胞とコンピュータを「相互作用」させたり、体の不自由な患者がロボットアームを操作して水を飲んだりする技術だ。かつてはSFの世界にしか登場しなかったが、近年はBCI技術の開発で現実のものとなってきている。

BMIは、脳科学と脳類似研究の分野のほか、電極や半導体チップ、データ、アルゴリズム、分析ソフトウェア、生体適合材料などを含む研究開発(R&D)プロセスを必要とするもので、先進国が開発を競う最先端技術となっている。

医療分野ではすでにBMIによって半身不随の患者が車椅子を操作できるようになっている。また医師たちはBCIを感情制御に利用することを模索しており、うつ病などの精神疾患のスクリーニングや診断にも新たな進歩をもたらすと期待されているのだ。

■中央政府が開発を促進

工業情報化部、科学技術部など中国政府7部門が共同で今年1月29日に発表した「未来産業革新と発展観の実施を促進意見」にも、量子コンピュータ、新型ディスプレイ、6Gネットワーク機器などに含め、BCI技術を盛り込み、研究開発を強化する必要性を明確に打ち出した。

5月29日には、中央ネット情報局、市場監督総局、工業情報化部が共同で「情報化標準建設行動計画(2024〜27年)」を発表し、BMI標準研究の推進、入出力インターフェイスの強化、脳情報の符号化・復号化アルゴリズム、脳情報の安全性確保などについて言及した。

中国工業情報化部は今月1日には、BMI技術の発展を促進するため、BCI標準化技術委員会準備プログラムをの設立を公表し、パブリックコメントを募集を開始した。中国でBCI技術標準の開発が加速する見込みであることを示した。

設立計画によると、企業や研究機関、大学などのBMI分野の専門家を委員として招聘。次の3つの主要作業計画を明確に定めている。第1に、標準化のロードマップを最適化・改善すること、すなわちBCI開発の優先順位を明確にし、BMI標準の策定と協調して推進すること。 第2に、主要技術標準の開発を加速する。すなわち、明確な優先順位に基づいて、脳波の収集、信号の収集/処理、信号の出力/実行およびその他の標準の側面を中心に、研究を実施する。第3に、研究機関や企業に対し標準化の実施を促進する。

中国の各地方政府も、BMI産業の発展を奨励・支援する政策を打ち出してている。上海市政府はこのほど、産・学・研の融合により、侵襲的、半侵襲的、非侵襲的なBCI技術など、複数の技術経路の発展を促進する方針を発表した。

一方、BCIの安全性と倫理の問題は、依然としてBCI技術が直面する最大の課題だ。中国政府は、「BMI研究に関する倫理指針」も発表している。

■マスク氏が先行も

世界的には、米国の実業家イーロン・マスク氏が設立したベンチャー企業、NEURALINK(ニューラリンク)が商業化を加速させている。今年2月、ニューラルリンクは、脳でコンピューターのマウスを操作することを実現した最初の被験者が現れたと発表した。

中国でもBMI開発も今年に入って次々と新しい成果が発表されている。天津大学医学院の研究チームは6月末、南方科技大学と共同で世界初のオープンソースでオンチップ脳コンピュータインタフェース「MetaBOC」の開発を発表した。ロボットの障害物回避、追跡、把持などの無人制御タスクの「脳」の育成を実現したという。

MetaBOCは、体外培養「脳」(脳のような器官など)と電極チップの結合を使用して、オンチップ脳を形成し、符号化と復号化、刺激とフィードバックを通じて、外界技術との情報相互作用を実現しているという。

清華大学の研究チームも、半身不随の患者に低侵襲BCIシステム「NEO(Neural Electronic Opportunity)」を移植し、運動能力の一部を回復させることに成功した。NEOは清華医科大学の洪波教授が設計・開発したものでは、マスク氏のNEURALINKとは異なり、脳の硬膜の外側に電極を設置する低侵襲の手術方法を用いており、脳組織を損傷することなく、長期間の動物実験を通じて開発されたものだという。

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