米国の銅関税50%導入方針、半導体業界に波紋

トランプ米大統領がこのほど、SNS上で8月1日より銅の輸入に対して50%の関税を課す方針を明らかにし、半導体を含む幅広い産業界に波紋を広げている。今回の措置は、米国内の銅サプライチェーンの強化を目的としているが、関税の詳細、対象範囲、例外措置の有無などはまだ不透明なままだ。
トランプ氏は「銅は国防省で使用量2位の素材であり、半導体、航空機、船舶、弾薬、データセンター、リチウムイオン電池、ミサイル防衛、高超音速兵器などに不可欠だ」と述べ、国内銅産業の再建を訴えている。
愛集微にによると、業界関係者の多くは、この発言が実質的な関税導入というよりも国内鉱業投資を促す交渉材料だとみている。アリゾナ州で進行中のリオ・ティントの銅鉱山プロジェクトなど、国内の投資を呼び込む意図があるとされ、本当に50%の関税が発動されるかどうかには疑問も残る。
警戒感高まる
直接的には半導体製品への課税ではないものの、銅は半導体チップ内部の配線やパッケージングに欠かせない導電素材であり、関税による価格高騰が製造コストに大きく影響する可能性がある。特に高性能半導体での使用量が多く、米国の半導体製造業はコスト圧力に直面することになる。
また、関税によって精錬銅や銅半製品(ワイヤー、板材、管材など)への影響が広がれば、電子機器、車載部品、再生可能エネルギー関連分野への波及効果も懸念されている。
米国市場では、電気製品や自動車、エアコンなどあらゆる銅使用製品の価格上昇が予想されており、国内インフレの一因になる可能性もある。米国内には主要な銅製錬施設が2カ所しかなく、生産の自給自足体制は現実的ではないと専門家は指摘する。
中国への影響は限定的か
一方、中国にとってこの銅関税の直接的影響は限定的とされている。中国は現在、世界最大の銅精錬能力を持ち、上流から下流まで一貫した産業チェーンを有する。世界の銅鉱山投資の約半分は中国が占め、世界の冶金設備の75%が中国に集中している。
実際の貿易量においても、中国の対米銅輸出は全体のわずか3%程度にとどまり、中国の産業チェーンへの実質的な打撃はない。また、国内でのAR/VR、半導体、自動車分野での銅使用が拡大する中、中国企業は既に高度な素材加工技術を持つ。
サプライチェーンが混乱
とはいえ、今回の関税措置は世界の銅供給構造の再編を引き起こす可能性がある。特に半導体業界においては、銅の供給不安が32%の生産能力に影響を与える可能性があるとの予測も出ており(PwCレポート)、干ばつなどの気候変動リスクも複合して問題が深刻化しつつある。
銅は価格・性能両面で代替が難しい戦略的リソースで、今後ますます半導体・EV・再エネ分野での需要が高まる。米国の関税強化によって、国際価格の高騰と供給網の混乱は避けられず、中国やアジア市場の優位性が今後さらに強まることが予想される。