米国とベトナムの新貿易協定、中国企業が“思わぬ恩恵”か

米国とベトナムが、ベトナムからの輸入品に一律20%の関税を課すことで新たな貿易協定を締結したことを受け、電子産業のサプライチェーンが分厚い中国が恩恵を受けるとみられている。3日の中国株式市場の関連株が軒並み上昇した。

2025年7月3日午前の株式市場取引で、中国A株市場の消費者向け電子OEM(受託製造)関連銘柄が上昇し、注目を集めた。工業富聯(フォックスコンの中国上場企業)は7%超の上昇、卓翼科技が4%超、歌爾股フン(ゴアテック)と立訊精密(ラックスシェア)は3%超の上昇を記録し、関連セクターでは10銘柄以上が上昇した。

背景には、米国とベトナムの新たな貿易協定がある。トランプ米大統領は同日、自身が立ち上げたSNS「Truth Social」で、米国がベトナムとの貿易協定を締結し、同国からの輸入品に一律20%の関税を課す方針を発表。また、他国からベトナム経由で輸出されるいわゆる「迂回貿易」商品については、関税率を最大40%に引き上げるとしている。

これによりタブレット端末「iPad」やイヤホン「AirPods」など、ベトナムで製造された米Apple(アップル)の輸入コストが大幅に上昇する可能性が高い。

こうした関税措置の影響により、中国の消費電子OEM企業が相対的な競争優位性が注目されている。第一に、中国国内には半導体チップパッケージングや精密金型、組立に至るまで、世界で最も完全な電子製造のサプライチェーンが形成されており、他国が簡単に代替できない。

第二に、立訊精密や歌爾股份などの主要企業は、競合他社に先んじてベトナム工場の展開を進めており、現地調達率はすでに60%を超える。このため、供給構造を柔軟に調整することで一部の関税リスクを回避できる体制が整っている。

さらに、中国政府が推進する「旧製品買い替え支援政策」も追い風となっている。2025年上半期(1〜6月)には、スマートフォンやタブレット端末などのデジタル製品に対する補助金申請件数がすでに6,486万件を突破しており、内需による安定的な受注がOEM企業を下支えしている。

Tags: , , , , , , , , , , , ,

関連記事