中国のデータセンター、「液冷式」に移行へ
生成AIで発熱量増加
生成AI(人工知能)や大規模言語モデル(LLM)といった多大な計算資源を求められる最新AIの普及につれて、消費電力の増加が懸念されるようになっている。これは発熱量の増加を意味するものであり、業界内では冷却方法を見直す動きが盛んになってきた。データセンターでは今後、空冷方式から液体による冷却(液冷)方式への移行が進みそうだ。
米調査会社IDCによると、中国のAI計算能力は向こう5年で年間52.3%のペースで伸び、2026年に1271.4EFLOPS(エクサフロップス)に達する見通しで、そのほとんどをスマートデータセンターが担うことになる。
智能製造網によると、中国でデータセンター業務などを手掛ける網宿科技の子会社である緑色雲図の徐明微COO(最高運営責任者)は「従来のデータセンターより高密度な計算力基盤であるスマートデータセンターは、稼動電力密度が高く、高発熱のサーバーをより効率的な冷ます技術が必要となる」と話す。
エネルギー消費構造の面では、IT機器と空調・冷凍機器がデータセンターの主なエネルギー消費源であることはよく知られており、両者はデータセンターの総エネルギー消費量の85%を占めている。 従来のデータセンターでは、空冷技術が主流の冷却方法として使用されているが、空気の熱伝達率は低く、冷却能力が不十分で環境への影響も大きいため、空冷はもはや高密度データセンターの冷却ニーズを満たすことができないと指摘する。
徐COOは、スマートデータセンターは液冷式への移行が必須との認識。液冷はエネルギー消費が低い上、排熱効率が高いといったメリットがあると説明した。空冷システムのPUE値が1.3~1.4程度であるのに比べ、液冷システムはPUE値を1.05~1.1に低減でき、高密度で計算量の多いスマート・コンピューティング・シナリオにより適応できるという。
網宿科技は液冷分野で中国の草分け的存在で、2015年に同技術の研究に着手した。多くの液冷システムが中国工業信息化部の「省エネ製品リスト」に収載されている。
中国の通信大手、中国電信(チャイナテレコム)も2023年12月、湖北省武漢市の「中国光谷中部ビッグデータセンター」で液冷方式のデータセンターを稼働させている。