東芝エネルギーシステムズ、中国のIon Novaと重粒子線治療装置の販売で業務提携
東芝傘下で原子力、火力、太陽光などのエネルギー事業を行う東芝エネルギーシステムズ(川崎市)は7日、中国の医療設備メーカーの艾立離子(上海)医療科技(Ion Nova)と重粒子線治療装置の中国での販売に向けた業務提携を結んだと発表した。中国市場で早期の初号機受注を目指す。
Ion Novaは、中国政府から中国国産の陽子線治療装置の製造販売認可を唯一受けている上海艾普強粒子設備(APTR)と協力協定を締結しているとともに、重粒子線治療装置の専門家で構成され、同装置の開発・販売に特化した会社。Ion Nova社やAPTR社の中国での知見・ネットワークなどを活用し、受注活動をさらに強化する。
中国では、新規がん患者が年間約450万人(2020年時点)に上り、適切ながん治療を行うことが国家として喫緊の課題となっている。そこで中国政府は、患者の治療時の負担が少ない重粒子線治療装置の導入・拡大に力をいれており、中国では現在重粒子線施設が2施設稼働中となっている。さらに、2025年までに重粒子線・陽子線合わせて41施設の導入許可が予定されている。
東芝エネルギーシステムズは、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構とともに重粒子線治療装置を開発し、2016年に同機構千葉地区新治療研究棟に、世界で初めて超伝導電磁石を採用することで小型化・軽量化に成功した重粒子線回転ガントリーを納入した。海外では韓国の延世大学向けに同装置を納入し、今年4月には同装置を用いた治療が開始されている。
重粒子線治療装置は、炭素イオンを光の速さの約70%まで加速して炭素イオン線(=重粒子線)とし、がん腫瘍に対して体の外から照射する外部照射放射線治療の一種。重粒子線は体内で広がりにくく、がん腫瘍にピンポイントで集中させることができるため、周囲の正常な細胞を傷つけにくい。加えて他の放射線に比べて「がん細胞の遺伝子」を破壊する能力が高いという特長がある。患者の身体的負担が少なく早期の社会復帰を可能とする治療方法と言われている。