米ウルフスピード苦境、背景に中国企業の台頭

世界のSiC(炭化ケイ素)市場で、技術革新をけん引していた米半導体メーカーのWolfspeed(ウルフスピード)が苦境に立たされている。電気自動車(EV)市場の減速や、中国企業の台頭が背景にある。
かつてSiC分野で技術革新の最前線に立ち、世界初の8インチSiCウェハー工場を稼働させたウルフスピードは現在、破産申請の可能性が報じられるほど厳しい経営状況に陥った。同社は現在、経営効率の向上と財務状況の改善を目指して事業再編を進めているという。
この苦境の背景には、外部からの強い圧力が存在する。特に2024年のEV市場の減速はSiCデバイス市場全体の成長に直接的な打撃を与え、ウルフスピードのSiCデバイスの売上高は23年と横ばいの水準にとどまった。
さらに同社が直面する最大の課題は、中国企業の急速な台頭だ。中国のSiC基板メーカーは、ここ数年で生産能力を大幅に拡大し、高品質でありながらコスト競争力のあるSiC基板を大量に市場に供給している。この動きは、24年のSiCウェハーの市場価格を約30%下落させる要因となった。
フランスの市場調査会社、Yole Groupの分析によると、現在、天岳先進や天科合達をはじめとする中国企業は、世界のSiC基板市場の約40%のシェアを確保するまでに成長した。これは2021年のわずか10%からの飛躍的な伸びとなる。
ウルフスピードにとって安定したキャッシュフロー源であったSiC基板事業は、今や中国勢力との激しい価格競争に巻き込まれており、専門家は、「『高品質SiC材料の堀』」で自らを保護しようとしたウルフスピードの戦略は、もはや機能しなくなっている」と指摘した。
ウルフスピードは、LEDおよび高周波デバイス事業を売却し、パワーSiC分野に注力してきた経緯がある。現在の厳しい局面を乗り越えるために、今後、事業のさらなる分割や、他のSiCデバイス企業との提携といった戦略が検討される可能性もある。
Yole Groupは、ウルフスピードの資産は、米国の国家安全保障上、依然として重要な戦略的価値を持っていると指摘した。