トランプ関税、中国の電子機械産業や軽工業での影響大きく

トランプ米大統領が3日に発表した「相互関税」政策によって、中国のエレクトロニクスや軽工業、繊維・アパレル、医薬品、家電、美容、通信、電力設備が大きな影響を受けるとみられている。製造業の国内回帰を狙ったトランプ米政権の関税政策に対応するため、中国政府が近く新たな政策パッケージを発表する可能性も出ている。
米東部時間5日、米国への全ての輸入品に一律10%の基本関税を課す措置が発効した。9日には、各国の関税や非関税障壁を考慮し、国・地域別に税率を上乗せする措置も発効する。これにより、中国への関税率は発動済みの20%に加え、34%が上乗せされて54%になる。2018年から19年にかけての米中貿易摩擦の際に企業に個別に課せられた関税(加重平均税率12%)を加味すると、米国の対中関税率は60%を超える。
東呉証券によると、トランプ関税が中国の産業に与える影響の大きさは、対米輸出依存度(当該業種の輸出額全体に占める対米輸出の割合)と、規模ウェート(中国の対米輸出額全体に占める当該業種輸出額の割合)の2点を考慮した。
軽工業と繊維・アパレルの中国の二大労働集約型産業は近年、東南アジアの生産能力を拡充している。東南アジアの国々はトランプ相互関税によって関税率が大幅に上積みされることから、コスト転嫁能力に欠ける中小企業は受注の喪失や収益力の圧縮に直面する。
エレクトロニクス産業は、中国の対米輸出の20%を占める。トランプ関税は成熟プロセス半導体の製造や、米アップル向け受託製造にインパクトを与える可能性がある。通信インフラ向けのサーバーやモジュールもコスト圧力が増す見通しだ。
バイオ医薬品も対米輸出ウェートが大きく、24年は米国向け輸出額の比率が25%に達した。
自動車部品産業や家電産業は同様に米国への輸出依存度が高く、トランプ関税のインパクトを大きく受ける見通しだ。
華安証券は、中国政府は今後、トランプ関税の影響を相殺するための政策パッケージを打ち出す可能性が高いとみている。2018年の米中貿易摩擦や、2020年の新型コロナウイルス禍で輸出下押し圧力が増大した経験などを踏まえ、中国政府が重点的に進める政策として、◇企業の輸出支援◇輸出商品の国内販売への切り替え◇消費喚起に向けた財政資金の投入拡大◇公金投入による重点プロジェクト建設の後押し◇適切なタイミングでの基準金利引き下げ――を列挙。4月末に開かれる中央政治局会議で、政策の方向性がより明確化されるとみている。