米国が小口貨物の免税撤廃、SHEINやTemuに打撃

トランプ米大統領による小口輸入の非課税措置廃止が、「SHEIN(シーイン)」や「Temu(テム)」といった中国の格安電子商取引(EC)業者を揺るがしている。2社は同免税制度を利用した低価格戦略を武器に米市場でシェアを拡大してきただけに「トランプ関税」の打撃は大きい。
トランプ米大統領は1日、中国からの輸入品に10%の追加関税を課す大統領令に署名し、800ドル(約12万円)以下の小口輸入品も課税対象に含めると明記した。
シーインやテムは、中国の工場などから郵便小包方式で商品を非課税で直接、消費者の手元に届ける方式を採用。強い価格競争力で米市場で急成長を遂げた。
統計によると、2024年に米国に輸入された非課税対象の小口貨物は13億件を超え、2015年の1億3,900万件と比べて急増した。
バイデン前政権も24年9月、小口貨物の免税制度を見直し、非課税対象を広げると発表しており、シーインやテムは米国の規制強化への対策として、海外に倉庫を建設するなど現地の物流網の構築に動き出している。シーインはすでに米インディアナ州ホワイツタウンとカリフォルニア州の2カ所に配送センターを持っており、現地での在庫管理を可能にした。
また2社はビジネスモデルの見直しにも着手した。2社は、EC企業が商品の広告宣伝から物流、販売まですべてのプロセスを一括して管理・運営する「フルホスティングモデル」を採用して急成長を遂げてきたが、この方式を一部見直し。物流などの一部プロセスをメーカーなどの出店業者が自ら行うように改め、小口貨物の免税制度が撤廃されても、それによって膨らむ物流コストを自社が負担することのないよう、前もって対策を講じてきた。
しかし、あらかじめ準備してきたとしても、今回のトランプ関税の“嵐”の直撃は避けられないだろう。シティグループのアナリストレポートは、「テムの米現地倉庫計画は全体業務のほんの一部に過ぎず、米国の倉庫から発送した商品の取引額は24年末時点で、同社の米取引額の2割程度にとどまった」との見方を示した。