SMICが28nm半導体を4割値下げ、競合他社の脅威になるか
中国の半導体受託生産大手の中芯国際(SMIC、上海市)がこのほど、回路線幅28nm(ナノメートル)の半導体の単価を従来の2500米ドル(約3万91500円)から1500米ドルへと一気に40%も引き下げたことが、業界の話題となっている。競合他社への圧力をかけるほか、国際市場でシェアを拡大する狙いがあるとみられている。
28ナノは先端プロセスではないものの、自動車制御や自動運転など幅広い分野で需要がある。同半導体はこれまで、台湾積体電路製造(TSMC)やサムスン電子といったグローバル大手が主力のサプライヤーとなってきたが、値下げをきっかけに、多くの自動車メーカーがSMIC製チップの採用に動くと期待される。
航空・宇宙分野でも、28ナノ半導体は安定性や信頼性の高さから、重要システム向け半導体の第一候補となっている。SMICは値下げを通じて、同分野でもより多くの内外顧客を獲得し、シェアを一段と拡大できる。
SMICの今回の値下げは、同社のすぐれたコスト制御能力を示したことだ。半導体製造業界において、値下げは原価割れを意味するものではない。量産化や技術改良によって、生産コストの大幅な引き上げを達成したことが、SMICが大幅に値下げにつながったとみられる。
中国ネットメディアの「潭月財経」は、「競合他社の不意を突いた絶妙な戦略」と論評した。SMIC値下げは、「TSMCやサムスンに巨大な競争圧力をかけることにもつながりそうだ」と指摘している。TSMCやサムスンはシェアを侵食される恐れがあるが、対抗値下げに踏み切れば、利益率が下がり、先端技術開発事業に影響を及ぶ可能性すらある。2社をこうした難局に直面させることは、SMICの絶妙な策と言えよう。
トランプ氏の大統領返り咲きで、対中強硬策を激化する見通しの米国へのけん制にもつながる。SMICの値下げを受けて、米国は対中半導体規制を一段と強化する可能性もあるが、国際市場における需要は客観的に存在する。海外の半導体企業がコストパフォーマンスの高さからSMICとの協業を選択すれば、米国の対中規制の効果を弱めるだろう。
事実、SMICの値下げは早くも著しい効果を上げている。28ナノ半導体に対する内外顧客の需要は急速に拡大している上、その他の半導体メーカーも自社の市場戦略を見直し始めた。値下げは利益の下押し圧力を生むものの、長期的に見れば、SMICの国際市場における地位を固めるだろう。