華為、多重露光による「5ナノ製造法」特許出願
次期スマホ「P70」に搭載か
中国の知的財産担当の中国国家知識産権局は3月27日、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)が出願した複数の特許の内容を公開した。そのうちの1つは、最先端の極端紫外線(EUV)露光装置を使わなくても、5ナノメートル(nm)の半導体チップを製造できるようになるとするもので、業界の関心を集めている。
華為技術が昨年8月、最新スマートフォン「Mate 60 Pro」に搭載した回路線幅7ナノの新型チップ「麒麟9000s」は世界に衝撃を与えた。米TechInsightsは電子顕微鏡によるスキャンを行い、そのトランジスタ密度を98MTr/mm²(1平方ミリメートル当たり0.98億個)と算出した。これは台湾の半導体受託製造大手、台湾積体電路製造(台積電・TSMC)や韓国サムスン電子の7nmチップとほぼ同じであるため、業界では華為は多重露光技術を使用していると推測されていた。
今回国家知識産権局が公開した情報によると、同特許(CN117751427A)は、半導体の微細化の限界を超える多重露光技術の一つとされる「自己整合4重パターニング(SAQP、self-aligned quadruple patterning)」を採り入れた半導体製造装置の製造方法に関する内容だ。
多重露光とは、チップの回路マスクパターンのエッチングを複数回に分けて完成させることで、オランダの半導体製造装置大手、ASMLの最先端のEUV装置がなくても、比較的後進的な技術や装置を使用して、7nmの装置で5nmのチップを製造する。最先端のチップを造することができる。華為は特許の中で、「本願の実施形態を実装することで、回路パターン形成の自由度を向上させることができる 」と述べている。
実際、多重露光は新しいコンセプトではなく、米Intel(インテル)など半導体大手も試みた過去があるが、実行する工程が増え、歩留まりや品質の保証が難しいとされてきた。
近年の先端半導体製造装置に対する米国の輸出規制により、中国企業はハイエンド半導体製造装置への依存を諦めざるを得ず、多重露光技術によって7nmと5nmプロセスを実現する代替アプローチを取らざるを得なかったことが華為の技術開発、特許の背景にあるとみられる。事実、華為は米国から制裁を受けたわずか数カ月後の2021年9月にこの特許を出願している。
SAQP自体は、よく知られた微細パターニング技術であるため、すでに中国でも多数の特許が他社からも出願されている。国家知識産権局のデータベースによると、中芯国際集成電路製造(SMIC)や長シン存儲技術(シンは金が3つ、CXMT)、米GlobalFoundries(グローバルファンドリーズ)、米Qualcomm(クアルコム)などが特許を出願している。
■ASMLのEUVへの依存度下げる
米ブルームバーグは、同技術を通じて、中国は国産5ナノ半導体の製造を実現する可能性を報じた。これにより、中国の先端半導体製造は、米国の技術制裁を回避し、オランダのASMLが独占製造している最先端のEUV露光装置への依存度を下げることができると指摘している。
消息筋によると、華為はこの5ナノ製造プロセス技術を、次世代旗艦モデル「P70」シリーズのプロセッサとデータセンター用チップに導入するとされる。
一方、海外技術メディアの分析によると、7nmプロセスの麒麟チップは二重露光によって製造歩留まりが50%になる可能性がある一方、5nmチップはSAQPの歩留まりは20%程度と相当程度低くなる可能性があるとされている。歩留まりの悪さがコスト高の原因となり、量産化や長期的な競争力の点では課題は多く、現実的ではないとする見方もある。