中国「国家総力で“中国版ASML”を」、半導体業界の重鎮が連名で提言

中国の半導体企業幹部や学界関係者が連名で発表した論文が海外で大きな議論を呼んでいる。米国による技術封鎖の強化を背景に、国家の総力を挙げて中国独自の露光装置メーカー、いわば「中国版ASML」を育成すべきだと訴えた。

香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは5日、中国の半導体大手企業幹部や学者らが文章を発表し、国家的な総力を結集して中国独自の露光装置企業を育成するよう呼びかけたと報じた。論文では、米国による技術規制の強化に対応するため、業界に対し「幻想を捨て、闘争に備えるべきだ」と訴えている。

英ロイター通信は、この論文が2026~30年の「第15次五カ年計画(十五五)」期間中に国家レベルの協力体制で実用的な露光システムを開発するよう求めている点に注目し、中国がより高いレベルの技術自立を目指す政策方向を示すものだと評価した。

論文は4日、中国の学術誌に掲載された。著者には北京大学集積回路学院の名誉院長であり、中国半導体ファウンドリーの創業者の一人である王陽元氏のほか、北方華創の趙晋栄董事長、長江存儲科技(YMTC)の陳南翔董事長、EDA(電子設計の自動化)企業・華大九天の劉偉平董事長など、半導体業界と学界の関係者計9人が名を連ねている。

論文は6つの章から構成され、中国のIC(集積回路)産業が「第6次五カ年計画」から「第14次五カ年計画」までどのように発展してきたかを振り返るとともに、産業構造や世界的な競争環境を分析。国家安全保障分野での半導体自立など中国の成果を整理する一方、「国家総力を十分に結集できていない」という問題点を指摘し、政策提言を行っている。

20年以降、半導体製造は米中技術競争の主要な戦場の一つとなっている。米国は中国が7ナノメートル以下の先端プロセスの生産能力を拡大することを抑え込むため、各種の規制措置を継続的に強化してきた。

論文では、米国が中国の台頭を阻止しようとしている分野として、チップ設計用ソフトウェアであるEDA、EUV(極端紫外線)リソグラフィー(露光)装置、そしてシリコンウエハーの三つを挙げている。露光装置を例に取ると、「ASMLのEUV装置は10万点の部品で構成され、部品供給企業は5000社に及ぶ。ASMLはそれらを統合する存在にすぎない」と指摘した。

EUV露光装置はシリコンウエハー上にナノレベルの回路パターンを描くための装置で、先端半導体製造の核心設備とされる。米国はすでにオランダの露光装置メーカーASMLによる中国向けEUV装置の輸出を禁止している。

論文によると、中国はEUVのレーザー光源、精密移動ステージ、光学システムといった主要分野で一定の技術的進展を達成している。しかし、それらの技術を国家レベルで統合し、完全な産業体系として構築することが「十五五」期間中の重要課題になるという。

著者らは、「中国のASMLをいかに創り出すか、そして“統合される側”の企業が名誉や利益の枠を超えて資金や人材を統一的に配分できる体制をどう構築するかは、関係部門が直ちに実行計画を策定すべき緊急課題だ」と指摘した。またEDAやシリコンウエハーについても、国家レベルの指導の下で企業間協力を進め、新たな共存共栄の仕組みを構築すべきだと提言している。

さらに論文は、中国半導体産業の現状について「規模が小さく、分散し、競争力が弱い。同質的競争による内耗が激しい」と率直に指摘した。現在、中国にはEDA企業が100社以上、半導体後工程企業が116社、ウエハー製造装置企業が185社、パッケージング装置企業が224社、IC設計企業は3626社存在する。

このうち年間売上高が1000万元未満の企業は1769社に達し、従業員100人未満の中小企業が全体の87.9%を占めるという。

著者らは「砂のように分散していては塔を築くことはできない」と述べ、中国企業がエヌビディアやクアルコムのような巨大企業と正面から競争するのは難しいと分析した。また市場経済の下では中小企業への強制的な統合も難しく、結果として公共資源が分散してしまう問題があると指摘した。

こうした提言が公表されたタイミングでは、中国で全国人民代表大会と全国政治協商会議からなる年次政治イベント「全国両会」が開催されている。5日、中国の李強首相は政府活動報告で、技術革新を支える金融サービスを強化し、重要技術分野の企業に対して株式上場やM&Aのための「グリーンチャネル」を常設化すると表明した。

論文の著者らも、半導体産業の発展に向け、研究開発の失敗や試行を許容する制度やインセンティブの整備を提案。国産化製品の採用を促進する補助金や保険制度を導入し、国産製品が大規模生産ラインに導入されるまでの期間を短縮すべきだとした。また、集積回路産業への投資拡大、基礎研究の10年前倒しでの計画、国際協力の強化、人材育成の強化なども提言している。

論文は最後に、「核心技術は買うことも、求めることも、乞うこともできない。自ら作り出すしかない」と強調した。そして「中国の半導体の前途には落石や落とし穴、茨や毒蛇がある。しかし、それらが中華民族の台頭を阻むことはできない」と結んでいる。

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