サムスン、世界初の2nmスマートフォン向けチップを量産開始

韓国サムスン電子は19日、業界初となる2ナノメートル(2nm)プロセスのスマートフォン向けアプリケーションプロセッサ(AP)「Exynos 2600」を発表した。世界のモバイル半導体業界に大きな衝撃を与えている。
このチップは、サムスン電子デバイスソリューション(DS)部門傘下のシステムLSI事業部が設計し、サムスン自社ファウンドリで2nmのGAA(ゲート・オール・アラウンド)プロセスを用いて製造されたものだ。ARM v9.3アーキテクチャに基づく新しい10コアCPUを採用し、最大3.8GHzで動作する高性能コア1基に、3基のパフォーマンスコアと6基の高効率コアを組み合わせている。サムスンは、全体の性能が最大39%向上したとしている。
GPU(画像処理半導体)には「Xclipse 960」を搭載し、演算性能は前世代比で2倍、レイトレーシング性能は最大50%向上したという。これにより、将来のGalaxy Sシリーズではモバイルゲーム性能が大きく進化するとみられる。
AI(人工知能)性能についても、強化されたNPU(ニューラル処理ユニット)により処理速度が113%向上。生成AI、翻訳機能、より高度なカメラ処理など、端末内で動作する各種機能が従来よりも高速化される。
さらにサムスンは、画像処理システムにISP向けAIアルゴリズムを導入し、被写体認識、ノイズ低減、色再現性の最適化を図る計画だ。Exynos 2600は最大3億2千万画素のカメラにも対応し、ハイエンドなモバイル撮影ニーズを満たすとしている。
サムスン電子は公式サイトでExynos 2600の詳細仕様を公開し、製品ステータスを「量産中」と明記した。これは、数千万台規模のスマートフォン供給に耐えうる歩留まりを確保したことを意味すると受け止められている。
AP開発の過程で大きな困難
スマートフォンは、高性能コンピューターを手のひらサイズに凝縮した最先端デバイスだ。CPU、GPU、NPU、モデム、メモリといった各種半導体を、SoC(システム・オン・チップ)として単一チップに統合する必要があり、高性能と高効率を同時に実現するため、APは「半導体技術の結晶」とも呼ばれる。
韓国メディアのBusinessKoreaは、サムスン電子がAP開発の過程で大きな困難に直面してきたことにも触れている。Exynos 2100および2200を搭載したGalaxy(ギャラクシー)端末では、発熱による性能低下が問題となり、主要顧客であった米半導体大手のQualcomm(クアルコム)は2022年後半に4nm以下のチップ生産をすべて台湾積体電路製造(TSMC、台積電)へ切り替えた。さらにサムスン電子のモバイル(MX)部門も、Galaxy S25では自社Exynosを採用せず、クアルコムのプロセッサ「Snapdragon 8 Elite」を採用した。
初めて導入のHPB技術
こうした背景を踏まえ、サムスンはExynos 2600の量産開始と詳細仕様の公開によって、これまでの疑念を払拭しようとしている。特に注目されるのが、モバイルSoCとして初めて導入されたHPB(ヒートパス・ブロッキング)技術だ。熱抵抗を最大16%低減し、高負荷環境下でも安定したチップ温度を維持できるとされ、長年付きまとってきた過熱問題の解消が期待されている。
サムスンは、どの端末にExynos 2600が搭載されるかについて正式には明らかにしていないが、市場では来年登場予定のGalaxy S26シリーズの一部モデルに採用される可能性が高いとみられている。地域によって搭載の有無が異なる見通しだ。サムスンは26年2月末に米国で開催予定の「Galaxy Unpacked 2026」でGalaxy S26シリーズを正式発表する計画だ。
現在、2nmチップの主要供給元は依然としてTSMCだが、同社の生産能力は逼迫している。こうした状況に加え、サムスンの2nm技術が徐々に評価されつつあることから、ファウンドリー(半導体受託生産)事業を巡る競争は一段と激化している。
12月15日には、米半導体大手のAdvanced Micro Devices(AMD、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)がサムスンのファウンドリーと2nmプロセスでの協業を協議しているとの報道もあった。次世代CPU(中央演算処理装置)、EPYC VeniceやOlympic Ridge(コンシューマー向け)の開発が候補とされ、最終契約は来年1月前後にまとまる見通しだ。業界関係者の間では、量産受注に至る可能性は高いとの見方が強い。
供給網の多様化が不可欠
サムスンはこれまでも高付加価値顧客向けのファウンドリーを目指してきたが、プロセス成熟度や歩留まり、市場の信頼不足から、高端市場でのシェアは限定的だった。しかし今年に入り状況は変わりつつある。AIの急速な普及で半導体需要が拡大する中、TSMCだけでは需要を賄いきれず、供給網の多様化が経済的・戦略的に不可欠となっている。
世界初の2nm GAAプロセスを採用したExynos 2600を搭載するGalaxy S26が正式に市場投入されれば、サムスン電子のファウンドリー部門は、その先端プロセス技術と量産能力を実証することになる。Tesla(テスラ)、Apple(アップル)、クアルコムなどからの追加受注につながる可能性もある。業界関係者は「Exynos 2600が市場で成功すれば、ファウンドリー事業の回復は加速し、27年には黒字転換も視野に入る」と分析している。
また、市場調査会社Canalysの報告によれば、AI機能への需要拡大を背景に、世界のAIスマートフォン出荷比率は24年の16%から28年には54%へと急増する見通し。23年から28年までの年平均成長率は63%に達し、サムスンやアップルといった主要メーカーが成長を牽引すると予測されている。



