米国、サムスンなど3大半導体工場の中国向け設備輸出特例を撤回

トランプ米政権は8月29日付の連邦官報で、韓国サムス電子とSKハイニックス、米半導体大手のIntel(インテル)大連工場の3社に対し、中国国内での半導体製造設備の使用を認めていた「検証済み最終ユーザー(Validated End-User, VEU)」認可を撤回すると発表した。この政策変更は告示から120日後に発効する予定で、中国による先端半導体製造技術の獲得をさらに制限する狙いがあり、世界的な半導体供給網の逼迫を一段と加速させる可能性がある。

中国経営報によると、業界アナリストは「サムスンとSKハイニックスの中国での生産能力は大きい。もし米国が完全に供給を断てば、短期的に非米国製品での代替は難しく、既存生産拠点の移転にも時間が足りないため、メモリー供給が逼迫する恐れがある」と分析している。

VEUは米国商務省産業安全保障局(BIS)が設けた制度で、信頼できる低リスクの外国企業に対し、対象となる半導体製造装置や技術を輸入する際、個別の輸出許可を不要にする仕組みだった。今回の措置により、三星中国半導体、西安のサムスンNAND工場、無錫のSKハイニックスDRAM工場、そしてインテル大連工場(現在はSKハイニックス子会社)は特例を失い、今後は案件ごとに米国への輸出許可申請が必要となる。

これにより、3社の中国工場でのNANDやDRAMの生産は厳格な審査下に置かれ、供給網や投資計画に影響を及ぼす見通しだ。国内の半導体関係者は「産能凍結、投資移転、顧客流出、サプライチェーン再編などリスクは大きい」と指摘する一方、江波龍や佰維、時創意といった中国のメモリーモジュール企業には短期的な追い風となる可能性を示した。

さらに、長江存儲(YMTC)、長鑫存儲(CXMT)など中国のメモリー大手には市場の空白が生まれ、成長機会が拡大するとみられる。製造装置や材料でも、中微公司(AMEC)、北方華創(NAURA)、拓荆科技(Piotech)といった国産サプライヤーによる代替需要が高まると予想される。報道によれば、YMTCはこれら国内装置メーカーとの協力を深め、エッチング装置や成膜装置の国産化を加速しており、成熟プロセス分野でも競争力を高める可能性がある。

一方、業界関係者は「120日の緩衝期間の間に政策変更の余地は残されており、生産停止に直結する可能性は低い」とも指摘。だが、長期的には「米国が中国を制限することで同盟国企業の利益を損なえば、ブーメランのように自らに跳ね返り、非米国エコシステムの成長をむしろ加速させる」との見方を示した。

中国商務部は反発

この件について中国商務部の報道官は8月30日、「半導体は高度にグローバル化した産業であり、数十年の発展を経て相互依存の産業構造が形成されている。これは市場原理と企業の選択がもたらした必然的な結果だ」と指摘。その上で、今回の米国の措置は「自国の利益を優先し、輸出管理を道具化するもの」であり、世界の半導体サプライチェーンの安定に深刻な悪影響を及ぼすと強く反発した。

Department of Commerce Closes Export Controls Loophole for Foreign-Owned Semiconductor Fabs in China

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