世界でメモリ価格が急落、中国では在庫を売り急ぐ業者も

世界で数カ月にわたって上昇を続けてきたメモリ価格がここに来て突如として反転し、市場ではメモリサイクルの天井到達への懸念が広がっている。中国でも「1日で100元(約2300円)以上下がった」とする卸売業者もあり、事前に大量在庫を抱えた大口業者が今や必死に売り急いでいるという。

米国の複数の小売業者でDDR5メモリの大規模な値下げが発生し、1セット当たりの最大値下げ幅は100ドル(約1万6000円)に達した。米PC周辺機器製造メーカーのCORSAIR(コルセア)のゲーム向けPC「VENGEANCE」シリーズを例に取ると、32ギガバイト(GB)容量・最高6400メガヘルツ(MHz)対応モデルの現在の販売価格は約379.99ドルと、直近の490ドルというピーク値から大幅に下落し、1セット当たりの値下げ幅は110ドルを超えた。

中国経営報によると、中国市場も同様の打撃を受けている。ある卸売業者は、主流の16GBメモリの価格が「1日で100元以上下がった」と述べ、事前に大量在庫を抱えた大口業者が今や必死に売り急いでいると明かした。

長年ストレージ機器を扱ってきた卸売業者は「先週の土曜日から、価格が一気に崩れた」と話す。主流の16GB 3200MHzメモリの極端な価格曲線によれば、昨年5月には130元台に過ぎなかったものが、その後一気に高騰し12月には最高値の980元に達したが、高値圏で数カ月推移した後、現在の現物価格は700元付近まで戻ってきているという。

同卸売業者は「価格の上昇幅が消費者の期待を先食いしてしまったため、どうしても必要な人でなければ買わない。昨年11月以前と比べると、売上は60%以上落ちている」と嘆く。

米グーグルがメモリの使用量減らせるアルゴリズム

これと同時に、米Google(グーグル)が「TurboQuant」と名付けた新型圧縮アルゴリズムの論文を発表した。この研究では、同技術が大規模言語モデル(LLM)の実行時におけるKVキャッシュのメモリ使用量を少なくとも6割削減できると指摘している。投資家はこれを即座に、AI(人工知能)ハードウェアの不足問題が根本的に緩和されメモリ需要が大幅に削減されるというシナリオとして織り込んだ。

現物市場の冷え込みは瞬く間に資本市場へと波及した。米メモリ大手のMicron Technology(マイクロン・テクノロジー)の株価は直近の高値から24%超下落し、米Western Digital(ウエスタンデジタル)も777.60ドルの高値から約21%下落した。先週だけで米国のメモリチップセクターの時価総額は約1000億ドル消失した。

価格の急落と株価の暴落を前に、市場参加者の間でメモリ業界の先行きに対する見方は大きく割れている。一部の投資家は従来型のメモリの「需要サイクル」がピークを迎えたと見る一方、HSBCは市場の懸念は過剰であり、現在はAI主導のメモリスーパーサイクルの中盤にあり、HBMなどのハイエンド需要は旺盛で、メモリ不足は1〜2年続く可能性があると主張している。

買い手が「ノー」

元ジャーナリストで台湾在住の著名な半導体アナリストであるダン・ニーステット(Dan Nystedt)氏は、「多くの強気派が今回の急落をグーグルの論文のせいにしているが、それは表面的な理由に過ぎない。価格下落の真の原因は、一部のスマートフォン向けメモリチップの価格上昇が止まったことにある」と指摘する。

DRAMとNANDの価格が高騰しすぎたため、一部のスマートフォンメーカーは2026年に中低価格帯スマートフォンの生産を減らすか、あるいはキャンセルする計画を立てていると同氏は明かす。2週間前にはすでに買い手がDDR4のさらなる値上げを拒否したという。

高価格が企業に増産を促すが、工場建設には時間がかかるため、新たな生産能力が一斉に解放されると価格が暴落するというものだ。このシナリオに従う投資家はすでに素早く撤退しており、マイクロンとサンディスクの株価が大幅に調整したのはそのためだと同氏は見る。

過去50年間でメモリチップは十数回の大きな好況・不況サイクルを経験してきた。2010年以降だけでも3回ある。2012〜2015年の3G/4Gとクラウドコンピューティングの爆発的成長、2016〜2019年の5Gとクラウドサービス事業者の拡張、そして2020〜2023年のコロナ禍が引き起こしたPC・サーバーの急増だ。そして2024年に始まったのが、AIサーバー(HBMとSRAM)が牽引する上昇サイクルだ。

独立系アナリストのジュカン(Jukan)氏は、買い手による値上げへの抵抗は主にDDR4などの従来型メモリに集中しており、メモリ市場全体ではないと指摘する。それ以前のDDR4価格の異常な急騰は中国市場での買い占めに一部起因しており、それがスマートフォンメーカーに低価格帯デバイスのスペックを調整する余地を与えた。

「しかしDDR5はまったく別の話だ」とジュカン氏は指摘する。スマートフォンメーカーとPCメーカーは今年第1四半期から第2四半期にかけて、DDR5の大幅な値上げを素直に受け入れた。現在のAIとハイエンドデバイスのエコシステムにおいて、DDR5は交渉の余地がある調達品ではなく、買い手がプレミアムを支払ってでも確保しなければならないコアな投入材だ。DDR5をベースに構築されたフラッグシップ製品はスペックを落とすことなど到底できない。

「メモリ企業の運営方法は、かつてのような盲目的な増産モデルではなくなっている」とジュカン氏は鋭く指摘する。サムスン、SKハイニックス、マイクロンの3大巨頭は、TSMCのビジネスモデルに近づきつつある。すなわち、コア顧客からの前払い金(アドバンスペイメント)と長期的な需要の視認性を確保した上で、初めて生産能力を構築するというモデルだ。

韓国メディアはすでに、サムスンがマイクロソフトなどの大手と前払い金ベースの協力協定を模索していると報じている。メモリ大手は過剰生産能力がサイクルを破壊する痛みを誰よりもよく知っている。そのため今彼らが追求するのは、極めて抑制された生産能力の拡張であり、条件反射的な過剰建設ではない。

投資銀行が強気を維持

現物市場のパニックムードとは対照的に、投資銀行はメモリ業界の長期的な見通しに対して依然として強い自信を持っている。HSBCは30日付のリサーチレポートの中で「われわれの見方では、現在の懸念は過剰に増幅されている。われわれはAI主導のスーパーサイクルの中間点にある」と明言した。

同行は現在の市場が過剰反応している5つの具体的な懸念を列挙している。第1に中東紛争がもたらす原材料と電力価格上昇の悪影響、第2に2026年下半期のメモリ価格上昇ペースの鈍化、第3にグーグルの「TurboQuant」やエヌビディアの「KVTC」などAIシステムのメモリ使用量を削減する業界技術、第4に主要メモリメーカーが段階的に増加させる設備投資計画、第5に中国のメモリメーカーとの競争激化である。

レポートは、中東紛争はメモリメーカーの原材料調達に実質的な影響を与えていないと指摘する。また利益の絶対的な成長が株価に与える影響は、DRAM価格上昇ペースの鈍化の影響をはるかに上回るとしている。さらにメモリメーカーは設備投資の執行において依然として高度な冷静さと自制心を保っていると述べた。

市場の売りを引き起こしたグーグルのTurboQuant技術については、今懸念するのは時期尚早だと同行は見る。この技術の商業化にはまだ約1年の時間が必要であり、参照パラメーターの規模も現在のAI環境より小さい。さらに重要なのは、TurboQuantはメモリ帯域幅のボトルネックを緩和し、システム効率を高め、トークンコストを下げることでAIの商業化と普及を加速させるとレポートが指摘している点だ。「純粋な影響として、われわれは効率の向上がAIの発展を加速させると考えている——これはポジティブな出来事であり、AIの採用率の急激な増加をもたらすはずだ」とレポートは記している。

同行はまた、26年のAIサーバー出荷台数が前年比28%の大幅増になると予測する。26〜27年にかけて、サーバー1台当たりの平均DRAM容量は17%という力強い成長を実現するという。そしてAI推論需要の爆発的拡大に伴い、エンタープライズ向けSSD(eSSD)は黄金時代を迎えつつある。27年までにeSSDがNAND総需要に占める比率は、2023年の18%から40%へと急上昇し、AIサーバーがその62%を吸収するとレポートは予測している。

同行は現在の市場がAI主導のスーパーサイクルの中盤にあり、その規模は1990〜1995年のオフィスオートメーションが引き起こした6年間にわたるDRAM不足に匹敵すると見ている。歴史を振り返れば、1990年から1995年にかけてWindows 3.0およびその後継OSの普及に伴うオフィスオートメーションが6年間にわたるDRAMの構造的不足を引き起こし、DRAMの市場規模は1990年の70億ドルから1995年の410億ドルへと6倍に膨れ上がった。

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