NIOの車載半導体子会社が22億元調達、半導体の自給体制構築へ

中国の新興EV(電気自動車)メーカーの蔚来汽車(NIO)は公式WeChatを通じ、半導体子会社の安徽神キ(王へんに幾)技術が、ライツ・オファリング(新株予約権無償割当)によって、22億元(約500億円)超を調達したと発表した。安徽神キにとって、創業後初の資金調達となる。調達後の企業評価額は約100億元に達する見通し。
ライツ・オファリングは、企業が既存株主に「時価より安い価格で新株を購入できる権利」を無償で配り、資金調達する手法。今回の出資には、合肥国投、合肥海恒、IDG資本、中芯聚源、元禾璞華など、複数の企業・ファンドが参加した。
同日に発表された公告によると、蔚来は取引完了後も安徽神キの株式62.7%を保有する。投資家側が合計27.3%を取得し、残る10%は経営陣向け株式インセンティブ制度を管理する機関が保有する。
蔚来は、今回の資金調達により、安徽神キが高性能かつ高い競争力を備えたハイエンド半導体製品の研究開発および市場展開を継続的に推進できると説明。自動運転や具身知能(Embodied Intelligence、身体を持ったAI)などの分野での長期的な戦略的布石を強化する狙いだ。
蔚来創業者の李斌氏は2025年7月の中国証券報の取材に対し、「我が社はチップを業界に開放する意向があり、安徽神キへの外部資本導入も排除しない」と述べていた。
安徽神キは、5ナノメートル(nm)の車載半導体を開発し、量産商用化を実現した企業とされる。法人代表は蔚来のスマートハードウェア担当・シニアバイスプレ人との白剣氏。主力製品の「神キNX9031」は2024年7月にテープアウトに成功し、2025年3月に蔚来のフラッグシップ車「ET9」へ初搭載された。その後、新世代「ES8」など、蔚来の新型車ラインアップ全体へ展開されている。
車載チップは自動車の「デジタル心臓」「スマート頭脳」とも呼ばれ、電動車市場が知能化競争段階へ移行する中で、知能運転レベル、車載インフォテインメントの処理性能、安全応答速度、電動化効率を左右する核心部品となっている。自社開発チップは、自動車メーカーが「知能定義権」を握るための中核戦略と位置付けられる。
蔚来は2021年の時点で自動運転向けチップの自社開発を決断。NPU(ニューラルネットワークプロセッサ)、ISP(画像信号処理)、SoC(システム・オン・チップ)まで、前後工程の基幹技術を全面的に内製化することを目指してきた。
同社によると、「神キNX9031」は2024年の量産開始以来、累計15万セット以上を出荷し、すべて自社ブランド車両に搭載されている。
近年、車載チップが完成車コストに占める割合は上昇を続け、将来的には中核的な利益源となる可能性が指摘される。一方で、国際情勢の複雑化に伴い半導体サプライチェーンの不安定性が高まっており、国産チップが大規模に車両搭載される重要局面に入ったとの見方もある。
蔚来以外にも、比亜迪(BYD)、小鵬汽車(シャオペン)、理想汽車(Li Auto)など大手各社が自社チップ開発を進めている。比亜迪はコードネーム「玄機」の自動運転用チップのテープアウトに成功し、2026年下半期の車両搭載を計画。小鵬汽車は自社開発「図霊(Turing)」AIチップを量産化し、新型「G7 Ultra」に3基搭載している。理想汽車も「馬赫100」チップのテープアウトを完了し、2026年に新型「L9」などへ量産搭載する予定だ。零ホウ(足へんに包)汽車や吉利汽車、長城汽车なども自社開発を推進している。
蔚来は、今回の資金調達後、次世代自動運転向けの超高性能チップや他分野向け複数製品を順次投入すると表明。安徽神キの初期受注は主に蔚来からだが、今後はエンボディドロボットやAIエージェント推論など新興分野への展開も積極化する方針だ。
業界では、今回の資金調達により蔚来の半導体内製戦略に新たな資金源が確保され、研究開発体制の拡充や開発加速、さらには外部供給への展開にも弾みがつくとの見方がある。



