中国で「V2G」の実装化進む、政策追い風に車メーカー各社が参入
電気自動車(EV)の普及が進む中国で、EVと電力系統の双方向充電技術「V2G」(Vehicle-to-Grid)の実用化が進んでいる。中国政府は、新型電力システムの構築を目指す方針の下、V2Gの活用を推進していくスタンスにあり、中国のEVメーカーがV2G市場参入に動き出している。
V2Gは、EVが充電施設を通じて電力網との間でエネルギー情報の交換をやり取りすることを指す。電力使用ピークを避けたEVへの充電や、EVから電力系統への逆充電を可能にし、EV電池を電力需給バランスの調整機能として活用できる。
国家発展改革委員会など中国の関連部門は今年1月、「新エネルギー車と電力網との相互運用強化に関する実施意見」を通知した。今後、長江デルタや珠江デルタ、北京市・天津市・河北省・山東省、四川省・重慶市といった地域で、EVと送電網を連携させる大規模な実証事業に取り組んでいく方針を示した。今年9月には、V2G大規模運用の実証事業推進に関する通知を出した。
江蘇省では今年8月、国内最大規模となるV2G実証エリアが商業利用を開始した。開始当日は1277台のEVが省内485カ所の充電ステーションを利用し、ピークカット・ピークシフト充電を実施。EVオーナーに合計6000元の利益を生み出とともに、ピーク時の受電電力を1万7000キロワット時(kWh)分削減した。
中国のEVスタートアップや大手自動車メーカーはEVインフラ環境の整備に向けて、自前の充電ネットワークの構築を進めており、V2G実証の重要な参与者となっている。
特に、充電・電池交換ステーションを独自展開する上海蔚来汽車(NIO)は、上海市、浙江省、広東省深セン、山東省、安徽省合肥などに「仮想発電所(VPP)」を整備し、多くの充電・電池交換ステーションを新型負荷管理システムに接続させた。
中国国有自動車大手の広州汽車集団の傘下で、新エネルギー車を手がける広汽埃安新能源汽車(アイオン)は今年3月、V2GとVPPを融合させた自動発電制御(AGC)ソフトウエアを搭載した車両を実際に使ったV2G実験に国内で初めて成功した。