「中国のエヌビディア」がIPOへ 国産GPUメーカーが続々と上場準備

「中国版NVIDIA(エヌビディア)」とも呼ばれているGPU(画像処理半導体)開発の摩爾線程智能科技(北京)(Moore Threads、北京市)と沐曦集成電路(上海)股フン(Innosilicon、上海市)がともに6月30日、科創板(スターマーケット)への上場申請を提出した。すでに上場準備を進めている上海壁仞科技(BIRENTECH、上海市)や燧原科技(上海市)と合わせ、中国の国産GPUを代表する4社すべてがIPOに向けた動きを加速させている。

このわずか数年で、彼らが飛躍的な発展を遂げられた背景には、数多くの著名投資家の後押しがあった。保守的に見積もっても、100を超える投資機関が数百億元規模の資金をこの分野に投じている。紅杉中国(セコイア・チャイナ)、IDGキャピタル、テンセント、字節跳動(バイトダンス)、聯想(レノボ)創投、春華資本など、名だたるVCがこぞって参入している。

国産GPUの戦略的重要性

4社の創業の起点は2018年にさかのぼる。当時、米中間の技術競争が激化し、中国におけるGPUの戦略的重要性が急速に高まった。

燧原科技は、米半導体大手、Advanced Micro Devices(AMD、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)の元技術者で、中国半導体メーカー、紫光集団(北京市)の副総裁を務めていた趙立東氏が中心となり、2018年に設立された。一方、壁仞科技は、ハーバード大学法学博士で投資銀行出身の張文氏が創業。GPU開発経験がなかった張氏だが、有力エンジニアたちを説得し、事業を軌道に乗せた。

2020年には、元NVIDIA中国区総経理の張建中氏が北京市で摩爾線程を設立。「中国最高の全機能GPUを作る」という志の下、中国市場に適したGPUエコシステムの構築を目指してきた。

沐曦股フンは、長年AMDでGPU開発に従事していた陳維良氏らが創業。設計から量産に至るまで20年近い経験を持つ技術陣が揃い主流GPU開発をリードしてきた。

IPOに向けた成長と課題

4社はいずれも、AI(人口知能)や高性能計算分野向けのGPU開発を進め、一定の売り上げを確保している。摩爾線程は4世代のGPUアーキテクチャを開発し、22年以降3年間の売上高は累計6億元(約119億7000万円)を超えた。沐曦股フンは累計2万5000個以上のGPUを販売し、同期間の売上は11億元超に達している。

壁仞科技は、国際大手が保持していた汎用GPUの演算性能記録を塗り替えたとされる「壁砺」シリーズを開発。燧原科技もAI推論カードやシステムソリューションを提供し、国内最大規模のAI推論クラスタを構築した。

しかし、急速な研究開発投資により、4社ともに未だ黒字化しておらず、24年には売上14億元の摩爾線程と沐曦股フンがともに14億元超の純損失を計上。研究開発(R&D)投資もそれぞれ13億元、9億元を超えた。

こうしたなか、上場によって資金調達を図り、技術開発の継続と規模拡大を目指すのが各社の共通戦略だ。摩爾線程とは80億元、沐曦股フンは39億元の資金調達を目指しており、「完全自主可控なGPUの実現」に向けて研究開発体制を強化する。

ユニコーンの誕生

2020年以降、国産GPU企業は未曾有の資金調達ラッシュを経験している。壁仞科技は設立から2年で47億元以上を調達。摩爾線程も創業から100日で数十億元を調達し、プレIPO時点での評価額は246億元を超えた。

沐曦股フンと燧原科技もそれぞれ数十億元を調達し、評価額はそれぞれ210億元、205億元以上。投資家には紅杉中国、テンセント、聯想創投、中金資本、春華資本などが名を連ねている。

胡潤研究院の「2025年グローバル・ユニコーンランキング」では、摩爾線程が310億元、燧原科技が205億元、壁仞科技が160億元の評価額を付けられており、いずれも中国の注目スタートアップとしての地位を確立している。AI時代における自立的な半導体技術の確立を目指し、国産GPU企業はますます存在感を増しそうだ。

摩尔线程智能科技(北京)有限责任公司

沐曦集成电路(上海)股份有限

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