東南アジア諸国、「半導体の中心地」狙う
世界の半導体サプライチェーンの中核をなす台湾が地政学的リスクに直面するなか、マレーシア、シンガポール、ベトナムなどの東南アジア諸国が台湾に代わる半導体サプライチェーンの新たな中心地になることを狙っている。
シンガポール政府は、さまざまな優遇策を設けて、ファウンドリー(半導体の受託製造)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)と、同社傘下の世界先進積体電路(バンガード・インターナショナル・セミコンダクター)の誘致に動き始めている。
報道によれば、世界先進は20億米ドル(約2,951億円)を投じて、シンガポールに同社初となる12インチウエハー対応工場を建設する計画を進めている。TSMCについても22年時点で、シンガポールで車載用とスマートフォン(スマホ)向け半導体工場の建設を検討していると報じられた。
シンガポールには研究開発、設計、素材・生産設備、製造、テスティングまでを網羅する半導体サプライチェーンが形成されている。半導体産業の国内総生産(GDP)寄与率は7%に達し、今後も拡大を続けると予測されている。
マレーシアでは、インテル、アドバンスド・マイクロ・デバイシズ(AMD)、ブロードコム、インフィニオン・テクノロジーがペナン島で工場建設を決めた。インフィニオンのマレーシアでの雇用数はすでに本拠地のドイツを超えており、マレーシアに70億ユーロを投じて次世代のSiCパワー半導体の工場を建設する計画もある。
ベトナムも、半導体生産拠点としての注目度が高まっている。米エヌビディアのジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)は昨年12月にベトナムのチン首相と会談した際、ベトナム拠点を検討していることを明らかにした。ベトナムには現在、インテルなどの半導体工場が進出しているが、パッケージング、テスティング、設計の分野に限られており、同国は2030年に国内初の半導体製造工場を建設するとの国家目標を定めている。
業界関係者は、「シンガポールとマレーシアは、各種の税優遇策や、低廉な労働力、成熟度の高い半導体生態系がいずれも魅力。出生率や科学・エンジニア分野の高度人材が減少を続けている韓国と異なり、東南アジア諸国は、修士・博士課程修了の半導体専門人材を大量に育成している」と指摘した。