浸没型液冷、中国のフッ素・シリコン大手が相次ぎ参入



AI(人工知能)による半導体チップの消費電力増大に伴い、中国フッ素・シリコン大手が相次いで、浸没型液冷の有機シリコン液冷ソリューション分野に進出している。

液冷技術は大きく間接式と浸没式に分けられる。冷却プレートを代表とする間接式液冷は技術的に成熟しており、液冷市場の9割以上を占めると見込まれる。一方、浸没式液冷はより先進的で、現時点での市場シェアは小さいものの、放熱効率が高く消費電力が低いことから、市場と政策の両面で後押しを受け、近年急速に成長しており「爆発前夜」にあるとされる。

浸没式液冷分野では、フッ素系冷却液とシリコン系冷却液が特に注目されている。国内のフッ素化学・有機シリコンメーカーは、産業チェーン上の優位性を背景に、このポジション争いで存在感を示している。各社は市場の成長性だけでなく、液冷技術における自主制御性と産業チェーンの安全性を重視しており、国内で完結するフル産業チェーンの強みが今後の競争で重要な役割を果たすと見られている。

有機シリコンメーカーが参入

有機シリコンメーカーである新安股份はこのほど、有機シリコン液冷ソリューションを正式に発表し、浸没型液冷市場に参入したことを明らかにした。シリコン鉱石の採掘・製錬から有機シリコンモノマー合成、下流の最終製品製造までを網羅する一貫した産業チェーンを有する企業で、2024年初頭からシリコン系冷却液の研究開発に着手し、約2年を経て製品化に至った。現在は算想科技と共同で開発した有機シリコン液冷ソリューションを搭載した商用算力プラットフォームが、すでに顧客向けに提供されている。

有機シリコン産業チェーンの中流に位置する晨化股フンや潤禾材料も、従来の深加工製品事業を基盤にシリコン系冷却液へ展開している。潤禾材料はすでに量産と販売を開始している一方、晨化股份は現在も顧客検証段階にあり、販売には至っていない。

フッ素系冷却液も拡大

フッ素系冷却液についても、同様に上下流企業が参入を進めている。2025年末には、上流の蛍石メーカーである金石資源が、下流の浙江ノア・フッ素化工への出資を通じて浸没式液冷市場に参入した。同社のフッ素系冷却液は国内市場で先行しているとされる。

永和股フンも冷媒事業を基盤にフッ素系冷却液を開発し、現在は市場投入段階にある。一方、有機フッ素化学分野で長年の実績を持つ新宙邦は早期から同分野に参入しており、半導体プロセス冷却やデータセンターの浸没式冷却向けに、すでに量産供給を行っている。

現在、浸没式液冷市場はまだ初期段階にあり、金石資源が投資する浙江ノアを除き、各社は具体的な売上規模を公表していない。公開情報によると、浙江ノアのフッ素系冷却液生産能力は年間5000トンで、24年の売上高は約5億4100万元(約122億5365万円)、純利益は約4626万元。金石資源は2億5700万元で同社株式の15.7%を取得し、全体評価額は約163.5億元とされる。

業界関係者は、AIの進展によりチップの高消費電力化と算力需要の爆発が共通認識となっており、浸没式液冷は不可避の選択肢だと指摘する。特にデータセンターのエネルギー効率指標であるPUE(電力使用効率)は重要で、浸没式液冷では1.1以下まで低減可能とされ、間接式に比べ長期運用コストで優位性がある。また、中国各地でグリーン算力を重視する政策が進み、上海では新設インテリジェント算力センターに対しPUE1.25~1.3が要件とされ、今後さらに厳格化される見通しだ。

中国企業の強みについて、劉継氏は「顧客は技術力と同時に供給チェーンの安全性を重視する。新安股フンは全産業チェーンを持つため、需要が急増しても安定供給を約束できる。これが『首根っこを押さえられない』強みだ」と述べ、フル産業チェーンの重要性を強調した。

中国はすでに世界で最も完備したシリコン系産業チェーンを構築しており、工業用シリコンや多結晶シリコン、有機シリコンモノマーなど中上流では価格決定力を持つ。一方、下流の精密化学分野では依然として追い上げ段階にあり、シリコン系冷却液ではダウやワッカーなど海外大手が先行している。フッ素化学も同様で、上中流では規模とコスト優位があるものの、下流の精密フッ素化学品では追随段階にある。ただし、環境問題を背景に3Mが撤退したことで、国内メーカーには新たな成長機会が生まれている。

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