米エヌビディア、GPUに「遠隔停止機能などは存在しない」と声明

米半導体大手NVIDIA(エヌビディア)は6日、自社のチップに「バックドア(裏口)」「遠隔停止スイッチ」あるいは「監視ソフトウェア」は存在しないと正式に否定した。この発表は、中国の国家インターネット情報弁公室(網信弁)が7月31日にエヌビディアを呼び出し、中国市場向けに販売されたAI(人口知能)向けGPU(画像処理半導体)「H20」にセキュリティー上のバックドアや脆弱性があるとの疑いについて説明を求め、関連証拠の提出を命じたことを受けたものだ。
エヌビディアは「サイバーセキュリティーは当社にとって極めて重要であり、当社のチップには外部からの遠隔アクセスや制御を可能にするような『バックドア』は存在しない」と述べた。
さらに、自社のGPUが医療、金融、科学研究、自動運転、AIインフラなど広範な分野で活用されているとし、「一部の専門家や政策立案者は、誤用のリスクを抑えるために、ユーザーの知らないうちにGPUを遠隔無効化する“停止スイッチ”をハードウェアに組み込むべきだと主張している」と言及。こうした機能の存在を疑う声に対し、「エヌビディアのGPUには、そのような機能は搭載されておらず、搭載されるべきでもない」と明言した。
同社は「このようなバックドアや停止機能が存在すれば、悪意ある攻撃者に悪用されるリスクが生まれ、グローバルなデジタル基盤の信頼性を損なう」と主張。多くの国では、既知の脆弱性を修正することを企業に求めており、「『善意のバックドア』などというものは存在せず、それは必ず排除すべきセキュリティホールである」とした。
また、これらの機能があることで「単一障害点(シングルポイント・オブ・フェイラー)」が生まれ、基本的なサイバーセキュリティーの原則に反するとも強調した。
エヌビディアは引き続き、オープンで透明性の高いソフトウェア開発を支持するとし、「ユーザーが明確に理解し、同意した上で、GPUの診断・性能モニタリング・エラー報告・迅速なアップデートなどを提供していく」と説明。責任ある安全な計算環境を提供し、顧客の競争力強化と業界でのリーダーシップ維持に努めるとした。
一方、中国国家インターネット情報弁公室は最近、エヌビディアのH20チップに深刻なセキュリティー問題があるとする報告があることを公表。米国では一部議員が、先端チップには「位置追跡」機能の搭載を義務付けるよう呼びかけており、米AI専門家の中には「エヌビディアのチップにはすでに追跡機能や遠隔停止技術が実装されている」との証言もある。
中国当局は、国家の《サイバーセキュリティ法》《データセキュリティ法》《個人情報保護法》に基づき、今回の面談と調査を実施した。今後の対応が注目される。



