小鵬汽車、自社開発のAIチップ「図霊」を独VWなどに供給へ

中国の新興電気自動車(EV)メーカーの小鵬汽車(シャオペン、広東省広州市)は11日、自社開発した自動運転向けAI(人工知能)チップ「図霊(Turing)」を、ドイツのフォルクス・ワーゲン(VW)をはじめとする他の自動車メーカーに供給する計画を明らかにした。
同社の共同創業者で最高経営責任者(CEO)を務める何小鵬氏によると、同社が独自に設計したAIチップ「図霊」は、2026年に中国市場で発売予定のVWの一部車種に搭載される見込みだという。現在、VW以外の自動車メーカーともチップ供給に関する協議を進めており、何氏は「長期的なパートナーを探している」として、複数社との交渉が進行中であるとした。
VWの中国法人は、「フォルクスワーゲンと小鵬汽車は、中価格帯のVWブランド車2車種を共同開発中で、両社がそれぞれの強みを持ち寄る。これらの車両は26年に発売される予定」とコメントしている。
今回の発表は、中国国内での車載チップ設計が着実に進展していることを示している。中国は長年にわたり外国製半導体への依存を減らすことを国家的課題として取り組んできた。特に自動運転や高度運転支援システム(ADAS)の進化に伴い、車載用高性能AIチップの需要が急増している。
さらに小鵬汽車が競合他社にも自社開発チップを販売する方針を示したことは、中国国内で激化する電気自動車(EV)市場競争の中で、外国勢が中国技術への依存を強めている現状を浮き彫りにしている。世界の大手自動車メーカーもパンデミックによる半導体不足を経て、自社チップの開発に乗り出したが、思うような成果は得られていないためだ。
VWは23年、小鵬汽車に7億米ドル(約1006億6000万円)を出資し、5%の株式を取得した。世界最大の自動車市場である中国でEVシフトし、生き残るための戦略の一環だ。現在、VWの数百人のエンジニアが安徽省合肥市や広東省広州市の工場で小鵬汽車と連携し、同社の先進運転技術の導入を進めている。
小鵬汽車は毎年50億元(約1000億円)をAI関連技術の開発に投じており、同社の研究開発(R&D)費全体の約半分を占める。何氏は、同取り組みが中国国内で初めて高速道路での自動運転機能や音声制御によるスマートコックピットを実用化した要因だと語る。
同社のEV最新モデル「小鵬G7」には、前方アームレスト下に2個、助手席の足元下に1個の図霊チップが搭載されており、合計で2200TOPS(1秒あたり2.2兆回の演算)という計算性能を実現している。中国市場における他社車両の典型的な演算能力が80~700TOPSであるのに対し、小鵬の最新モデルは3倍から最大28倍の性能差となる。何氏は「図霊の実効演算能力は、米半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)の自動運転向け主力チップ『Orin-X』の3倍に達する」と自信をのぞかせた。
何氏はまた、過去数年間の巨額投資を回収するため、今後はチップを外部に売るビジネスの拡大にも注力すると語り、「100万枚売れれば黒字になると聞いているが、本当にそうかは実際に売ってみてから判断したい」と語った。
EV業界では、小鵬汽車はエヌビディアや米Qualcomm(クアルコム)といった西側の技術大手に挑戦する複数の中国企業の一つであり、蔚来汽車(NIO)、地平線ロボティクス(Horizon Robotics)、黒芝麻科技(Black Sesame Technologies)などと並び注目されている。
25年4月末時点での中国における純電動車(BEV)販売シェアで、小鵬汽車は6%を占め、比亜迪(BYD)、吉利汽車(Geely)、上汽集団(SAIC)、米Tesla(テスラ)、長安汽車に次ぐ第6位にランクインしている。
何氏は「チップ開発は長期的な取り組みだ。小鵬汽車のビジョンは自動車、航空機、ロボット分野で多様なビジネスを展開すること。我々のAI大規模言語モデル(LLM)を支えるチップが必要だ」と語った。