華為、5nmプロセスのSoC「麒麟」公開=中国国営放送
国内サプライチェーンで開発か

中国国営メディアの中国中央電視台(CCTV)はこのほど、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ、広東省深セン市)が完全国産の5ナノメートル(nm)プロセスで製造された半導体チップ「麒麟X90」チップを公開したと応じた。CCTVは、同チップは華為のOS「鴻蒙」と統合され、ハードウェアからソフトウェアに至るまで全工程を中国国内で完結できる体制が整ったと伝えた。
これまで華為は半導体受託生産(ファウンドリー)世界大手の台湾積体電路製造(TSMC、台積電)などにチップ製造を依存していたが、今回の「麒麟X90」は中国本土のサプライチェーンを用いて製造されたとされる。つまり、5nmクラスの先端半導体が中国国内で量産可能になったということを意味しており、従来の技術的ボトルネックを突破した形だ。
さらに業界関係者の見方では、中国は5nmのみならず、既に3nmや2nmプロセスの開発にも着手している可能性が高いとされる。西側諸国が特定の企業に製造を集中させる構造とは異なり、中国は材料・装置・設計・製造の全工程を国内で展開する「フルバリューチェーン」戦略をとっているため、1つの技術的ブレイクスルーが産業全体に波及しやすい構造にある。
この「麒麟X90」の復活は、単なる自社製品のアップデートにとどまらず、モバイル向けプロセッサの分野で中国が再び国際トップクラスと肩を並べることも意味する。かつての「麒麟990」シリーズも世界最先端クラスに位置付けられており、今回の5nmチップによってその差はさらに縮まる、あるいは逆転する可能性すらある。
米国にとってこれは大きな打撃となる。EDA(電子設計自動化)ツールや高性能露光装置、最先端の製造技術に対する輸出規制を通じて中国の半導体産業を抑え込もうとしてきたが、中国は独自にその壁を乗り越えた形となった。
重要なのは、この技術的突破がスマートフォンに限らないという点である。AI(人工知能)チップなどの高性能計算デバイスにおいても、5nmプロセスは不可欠であり、華為、寒武紀、摩爾線程といった中国企業が続々と製品開発を進めている。これにより、中国国内の需要の95%以上を国産チップで賄える体制が整いつつあり、米国主導の半導体覇権に揺さぶりをかけている。
今後、国産高性能チップの商用化が進み、国内市場が成長を続けることで、中国独自の半導体エコシステムが構築される見通しだ。グローバル企業にとっても、中国の技術台頭を無視することは競争力を喪失することに等しくなる。適切なタイミングで戦略的な判断を誤らないことが、今後の生き残りを左右するとみられている。