トランプ関税で金融市場に衝撃、米債も下落

米ホワイトハウスは10日、中国に課した関税の税率の合計が145%になると明らかにした。これは、「相互関税」として10日に発動した新関税の税率125%に、3月に発動済みの関税20%を足し合わせた数字。トランプ関税による経済への影響が懸念されて、10日の米株式相場は大幅反落し、ドルや原油価格も下げた。さらに安全資産とされた米国債も売られ、10年債と30年債の利回りは大幅に上昇した。

財経によると、Horizon InvestmentのScott Ladner最高投資責任者(CIO)は、金融市場が大きく動揺した根本的な要因は、トランプ大統領の貿易政策によって、投資家の間で米国資産の嫌気売りが広がったことにあると指摘した。

米系投資銀行のブラウン・ブラザーズ・ハリマンは、「トランプ関税の脅威が絶えず変化し、米中貿易戦争が激化している情勢は不確実性を生み出し、世界経済の下押し要因となっている」と指摘。さらに、「トランプ大統領の突然の方針転換は、もともと低かったトランプ氏に対する信頼感をさらに低めた」と述べた。

トランプ大統領は、発動したばかりの「相互関税」について、報復措置をとらない国や地域に対して90日間、停止すると発表した。トランプ大統領が突然の翻意に至った理由は、米国債の暴落にあるとも言われている。

米銀JPモルガン・チェースの前主任グローバルマーケットストラテジストのマルコ・コラノビッチ氏は、「債券市場の崩壊は、ホワイトハウスを崩壊の瀬戸際に立たせることになりかねない」と指摘する。

債券価格の暴落は、株価が下落を続けるなかで、巨額の損失を被ったヘッジファンドが米国債を投げ売りにしたことが原因の一つとみられる。FRB(連邦準備制度理事会)は2022年のゼロ金利政策解除に伴う金融引き締めの一環として、保有債券の売却に動き出し、巨額のファンド資金が米国債市場に流入していた。

米国国家経済会議(NEC)委員長のケビン・ハセット氏は、「債券市場から放たれたシグナルは、トランプ大統領が相互関税の一部を90日間停止することを決めたことに“ほんの少しでも”貢献した」と指摘した。国際通貨基金(IMF)の試算によると、ヘッジファンドが保有する米国債の比率は2021年の2~3%から24年夏に11%に急上昇した。レバレッジを活用して取引を行うヘッジファンドは価格の変動に極めて敏感であることから、FRBが資金撤退を進める米国債市場は不安定感が露呈してきたとの見方も出ている。

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