BYD、先進運転支援システム「天神之眼」を全EVモデルに搭載へ

中国の電気自動車(EV)大手、比亜迪(BYD、広東省深セン市)の王伝福会長兼最高経営責任者(CEO)は10日夜、自社開発の高度先進運転システム「天神之眼(God’s Eye)」を同社の全てのEV量産モデルに搭載すると発表した。これまで高級EVにしか搭載されていなかった先進運転システムを20万元(約416万円)以下のモデルでも普及させる狙いだ。
「天神之眼」は、フロント部分などに設置したカメラやセンサーなどから取得したデータを基に、車両周囲の状況の認識から判断、運転操作までの全てをAI(人工知能)が担うEnd-to-End(E2E、エンドツーエンド)システムの制御アルゴリズムを搭載。高速道路や都市高速道路など計画された経路での障害物の回避・迂回、信号での発進・停止、複雑な交差点での追い越し、迂回路への進入、車線変更などが可能だ。時速100キロメートル(km)での自動緊急ブレーキ(AEB)機能もあり、将来的には120kmと140kmにも対応する予定だ。
車種の価格帯モデルごとに先進自動運転システムのレベルを合わせたのが特徴で、「天神之眼」はA、B、Cの3つのバージョンを揃えた。「天神之眼A」は、LiDER(高性能センサー)を搭載する同社の自動運転システム「DiPilot 600」採用バージョンで、主に高級EVモデル「仰望」に搭載。「天神之眼B」はDiPilot 300を採用したバージョンで、主にEVモデル「騰勢(DENZA)」などに搭載する。A、Bバージョンともに都市部での高度な先進運転支援システムNOA(ナビゲートオンオートパイロット)機能を持つ。
注目は「天神之眼C」だ。フロント部分の3つの画像認識カメラなどを含むカメラ12台、ミリ波レーダー5台、超音波センサー12台に、同社の自動運転システム「DiPilot 100」を採用したバージョンで、主にEV「海鴎(Seagull)」 など20万〜10万元以下の普及版BYDモデルに搭載。高速道路での運転支援システムNOA機能と、スマートフォンで遠隔駐車できる機能などを備えた。一方、都市NOA機能は当面20万元以下のモデルには搭載しない方針だ。
王会長は同日の発表会で、「天神之眼によって普遍的なスマート運転の時代を切り開く」と強調した。
平安証券は「10〜20万元モデル市場はBYDの得意とするEVセグメントで、この価格帯の全シリーズに天神之眼Cを搭載するということは、他の自動車メーカーも同価格帯モデルでの競争のため、先進運転支援システムの搭載をしていくきっかけになるだろう」と指摘した。
先進運転支援システムではすでに高度な都市NOA機能を実現している華為技術(ファーウェイ)や理想汽車、小鵬汽車(シャオペン)などの優位性は依然として持っているものの、 BYDの25年のスマートカー戦略はまず高速NOA機能の普及を加速させる戦略を明らかにしている。
