【インタビュー】「日本でAI自動運転車の普及加速を」、元戎啓行の周光CEO

「オートモーティブワールド2025」で講演した深セン元戎啓行科技の周光CEO=22日、東京ビッグサイト

中国の自動運転ソリューションスタートアップ企業、深セン元戎啓行科技(DeepRoute.ai、広東省深セン市)の周光(Zhou Maxwell)最高経営責任者(CEO)は22日、東京ビッグサイトで開幕した「オートモーティブワールド2025」でAAiTのインタビューに応じ、近くローンチする同社のAI自動車向けの次世代自動運転ソリューション「VLA(Vision-Language-Action Model)」などを通じて、日本で自動運転技術の普及を本格化させたいとの意欲を示した。

元戎啓行は2019年の設立。中国各地のほか、米シリコンバレーにも拠点を持ち、米半導体大手、NVIDIA(エヌビディア)の車載コンピューティングプラットフォーム「NVIDIA DRIVE Thor」に基づいて制御アルゴリズムの開発を進めていた次世代AI自動運転車向けソリューション「VLA(Vision-Language-Action Model)」を今年第2四半期(4〜6月)に発表する計画だ。

周氏は、「VLAを通じて自動車は人間のようなスムーズで高次の思考能力を持ち、複雑な相互作用事象、隠された意味情報、交通シナリオの論理的推論を理解できるようになる」と強調する。具体的には、中国や日本のように複雑な道路環境下での交差点の右折や左折がスムーズに行えるほか、道路への歩行者の飛び出しなどの「エッジケース(想定が難しい極端な事例)」も予測して回避でき、安全性は高い。カメラから取得したデータを基に、車両周囲の状況の認識から判断、運転操作までの全てをAIが担うEnd-to-End(E2E)システムのため、「高精度3次元地図データ(HDマップ)は全く必要ないばかりかLiDER(ライダー、高性能センサー)も必ずしも必要とせず、自動運転車両のコスト削減にもつながる」と話す。

周氏は「VLAはテスラの自動運転ソリューション(FSD)の最新バージョン13と同程度のレベルに達している。中国と米国のAIパワーの差は半年程度までに縮められたと思う」と自信を示す。中国で「NOA」と呼ばれる、都市部でハンドルを握らないでも目的地まで走行できる自動運転L2+(プラス)で、「中国では華為技術(ファーウェイ)、理想汽車(Li Auto)、小鵬汽車(シャオペン)と弊社の4社のみが達している技術だ」と周氏は指摘する。

日本でも28〜29年に量産搭載へ

同社の自動運転ソリューション「DeepRoute IO」は中国で初めて高精度地図を必要としないE2Eシステムを採用しており、昨年8月から中国自動車大手の長城汽車(河北省保定市)や浙江吉利集団傘下ブランド、Smart(スマート)などの3車種への量産搭載が始まり、昨年通年の導入台数は合計3万台に達した。今年は中国自動車メーカーを中心に10車種、20万台への拡大する。

今年から海外展開も加速していく計画で、日本のいくつかの自動車メーカーなどとも接触があり、「遅くても28〜29年の量産搭載を目指したい」との目標を話す。

最新技術への更新スピードが鍵

周氏は「中国では契約から搭載までの時間は最短で6〜7カ月と短く、モデルチェンジの車種を次々と投入して市場のシェアを素早く取っていくのが中国の自動車メーカーのやり方だ。量産車への搭載までに3〜5年以上かかる日本の完成車メーカーは、最新技術の採用もそれだけ周回遅れとなってしまう恐れがある。世界の自動運転技術は加速度的に進化しており、3〜5年後はもう全く別の最新技術が主流になっているだろう」と指摘する。

「自動車はSoC(システムオンチップ)が鍵を握る時代だ。スマートフォンのようにスピード感を持って最新モデルにアップデートをしていかなければユーザーを満足できない。小米(シャオミ)や華為などのスマートフォンやIT企業がEVや自動運転車両でも存在感を増しているのもそのため。日本でも最新機能を搭載した魅力的な車種を投入していくためにも日本メーカーと協力して弊社のAI技術をなるべく早く提供していきたい」と話した。
(インタビュアー:吉沢健一編集長)

AAiTのインタビューに応えた周CEO=22日、東京ビッグサイト

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