韓国サムスンが業績不振、ファウンドリー事業が重しに
韓国サムスン電子が8日発表した2024年第3四半期(7〜9月)決算(速報値)によると、営業利益は約9兆1000億ウォン(約1兆10億円)と、市場予想の11兆5000億ウォンを大きく下回った。潜在的な危機への対応に苦慮していることを珍しく認める形で、長文の謝罪文を発表した。
サムスンが新たに半導体部門の責任者に起用された全永鉉(Jun Young-hyun)氏は声明の中で、「組織文化と業務プロセスを深く見直す」と指摘。また「短期的な対応に頼るのではなく、長期的な競争力の強化に注力する」と強調した。
第3四半期の営業利益は約9兆1000億ウォンと、市場予想の11兆5000億ウォンに届かなかった。業績連動ボーナスの引当金に関連する一過性のコストが重しになったと説明。売上高も79兆ウォンにとどまり、予想の81兆5700億ウォンを下回った。
全氏は「サムスンが危機に直面しているとの声もあるほど、当社の技術競争力が懸念されている。企業のリーダーとして全責任を負う」と述べた。
サムスンの株価は、8日のソウルでの取引開始時に1.8%下落した。サムスンの主要市場での不振を考えると、同社の株価は今年に入ってから20%以上の下落となっている。
ライバルのSKハイニックスに遅れ
サムスンは、AI(人工知能)開発に使われ、米半導体大手NVIDIA(エヌビディア)のプロセッサと組み合わされるメモリチップの分野で、ライバルの韓国SKハイニックスに遅れをとっている。
SKハイニックスは、エヌビディアのAIアクセラレーターに匹敵する広帯域メモリーチップの生産で先行している。これとは対照的に、サムスンは最先端のHBM(高帯域幅メモリー)技術開発の遅れに苦しんでいる。
サムスンは世界各拠点で人員削減を進めている。すでに東南アジア、オーストラリア、ニュージーランドでレイオフを開始したとされている。
ファウンドリー事業の分社化を否定
サムスンはメモリーチップ事業への依存度を下げるため、サムスンはロジックチップ設計とチップファウンドリー製造に積極的に進出している。
李在鎔(イ・ジェヨン)会長は2019年、30年までに半導体受託生産大手の台湾積体電路製造(TSMC、台積電)を追い抜き、世界最大のチップファウンドリーメーカーになるというビジョンを打ち出した。そのために、サムスンは韓国と米国の新工場への投資と、チップファウンドリー事業の発展のための合計数十億米ドルの投資を発表した。
しかし、新しい生産能力をフルに活用するための大口受注争いでサムスンは苦戦を強いられているとされる。
サムスンは今年4月、タイラーのチップ工場の生産計画を当初の24年末から26年末に延期すると発表し、顧客の需要に基づいて段階的にプロジェクトの稼働を推進すると述べた。米Apple(アップル)やエヌビディアのような大口顧客の獲得ができておらず、深刻な課題に直面していることを意味しているとみられる。これらファウンドリー事業で毎年数十億米ドルの損失を被っており、全体的な業績の足を引っ張っているとみられている。
サムスンはチップ製造事業(=ファウンドリー事業)とシステムLSIロジックチップ設計事業のどちらを分社化するつもりなのかとの質問に対し、李会長は「事業の拡大に全力を注いでおり、分社化は考えていない 」と明言。彼はまた、テキサス州タイラーにあるサムスンの新チップ工場が多くの困難に直面していることを認めた。
サムスンのファウンドリー事業とLSI事業の昨年の営業損失は3兆1800億ウォンに達した。韓国のアナリストらは、今年の両事業の損失は2兆800億ウォンに達すると予想している。