「半導体国産化」目指すロシア、台湾からシリコンウエハ調達か
ロシアに焦点を当てた独立系メディア『The Insider』は、「ウクライナ侵攻の制裁として西側諸国による半導体関連製品の輸出規制を受けるロシアが、現在もあるルートを通じて半導体の原料となるシリコンウエハを台湾から輸入している」と伝えた。半導体チップの製造に欠かせない半導体露光装置も5台が国内で稼働しているとされ、技術は大幅に遅れているものの、半導体国産を実現できる条件を備えている。
ロシアが2022年2月にウクライナへの全面的な軍事侵攻を開始したことを受け、米国、欧州連合(EU)、日本、シンガポール、韓国、台湾は相次いで、ロシアに対する半導体輸出規制を開始した。半導体サプライチェーンを断つことで、ロシアの軍事力を弱体化させる狙いがある。
ロシアは高性能、かつ商用可能な先端半導体を生産する技術に欠けるが、旧式の半導体生産技術はソ連時代にすでに開発しており、半導体製造技術を持たないわけではない。
ロシアの税関によると、2023年のロシアの半導体関連製品輸入額は1億5,050万米ドル(約208億2300万円)だった。うち半導体向けシリコンウエハの同国輸入最大手であるEpiel社は、同年にシリコンウエハを220万米ドル輸入した。Epiel社の最終顧客はいずれも軍需企業だ。
Epiel社は2010年代初頭からアジアや米国からシリコンウエハを買い付けていたが、ウクライナ戦争が始まって以降は、主な調達先を東南アジアに変更した。さらに『The Insider』が入手した同社の調達先リストには、台湾企業のPai Haung Technologyも掲載されていた。
Pai Haung Technologyは、ウクライナ戦争勃発後に、合わせて400万米ドル規模のシリコンウエハをロシアとベラルーシに輸出した。しかし同社の知名度は極めて低い。『The Insider』は、Pai Haung Technologyはサードパーティー販売業者に過ぎず、実際の供給元は台湾の半導体用シリコンウエハ大手の合晶科技(ウエハーワークス)だとの見方を示した。
台湾からシリコンウエハの供給を受けるEpiel社は、米国や台湾などの対ロ制裁リストに掲載されていないが、Pai Haung Technologyの別の顧客であるロシアのファウンドリー(半導体製造受託メーカー)のミクロン(Mikron Group)は規制対象となっている。ミクロンは回路線幅90ナノメートル(nm)の製造プロセスを採用した半導体ウエハーを量産できる技術を擁する。
一方、ロシアが半導体国産化を実現する上で欠かせない重要設備である半導体露光装置に関して、世界トップ企業である蘭ASMLは『The Insider』の取材に対し、「ロシアにこれまで大量の露光装置を販売した実績はなく、ロシアは解体された中古の露光装置を第3国から輸入するしかない方法はない」と回答した。
以前の報道によれば、ロシアでは2022年末時点で5台の露光装置が稼働しているが、どの設備も対応できる技術は15~20年前の365~193ナノプロセスにとどまるという。
ASMLは、「ロシアの露光装置にメンテナンスサービスを提供することはないが、いまも多くの関連部品がメーカーの制御が不能な中古市場に流通している」と現状を明かした。