MCU業界に再編の波、中国企業がTI、STを猛追

世界のマイクロコントローラ(MCU)市場に地殻変動が起きている。かつて業界をけん引してきたテキサス・インスツルメンツ(TI)とSTマイクロエレクトロニクス(ST)が変化する市場の波にもまれて苦境に陥る一方で、高いコストパフォーマンスを持つ中国企業が急速に台頭してきた。

半導体産業縦横によると、TIは今年3月、長期的な運営計画の下で、米ユタ州リーハイの工場で人員削減を行った。TIは人員削減の具体的な理由を説明していないが、業界関係者は、同工場の稼働率不足が理由である可能性が高いとみている。

奇しくも、STにも人事調整のニュースが伝わった。同社のジャン=マルク・シェリー最高経営責任者(CEO)は今月、今年初めに発表した2,800人の人員削減計画も含め、今後3年で従業員5,000人が離職する見込みだと発表した。STを巡っては、フランスとイタリアの両政府および関連株主が再分割を検討する計画も報じられている。

STの売上高の中核であるMCU製品は、兆易創新(GigaDevice)などの中国メーカーの台頭を受けて、汎用製品の中国市場シェアが縮小を続けている。車載用MCUも同様に、インフィニオンなどのトップメーカーからの攻勢や、中国メーカーによる国産化の影響を受けている。

中国企業ではこのほか、納芯微(Novosense)や極海半導体(Geehy Semiconductor)などがTIやSTの対抗製品を相次いで投入。グローバル大手に真っ向対抗するようになった。

もっとも、安価な中国製MCUの台頭は、極度の内部競争も招いている。一部の製品分野では、頻繁な価格比較が常態化しており、ある中国製MCUを一度採用しても、いつでもより安価な代替品に切り替わる可能性がある。

こうした価格競争の背後には、一つ目には、世界的な半導体生産能力の拡大により、MCU市場が供給過剰の状態に陥ったこと、二つ目には、市場の需要構造が変化し、消費者のコストパフォーマンスに対する要求がますます高まっていることがある。

市場構造の変化は、価格競争だけでなく、ファウンドリとの提携やサプライチェーンの調整にも現れている。STは40nmプロセスのMCUを華虹半導体で生産すると発表した。STにとっては、華虹半導体の生産能力とコスト優位性を活用して自社の生産体制を最適化でき、華虹半導体にとっては、技術を向上させ、市場を拡大する好機となる。

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