AIチップの寒武紀、業績低迷でリストラ敢行
中国の人工知能(AI)チップ開発大手の中科寒武紀科技(カンブリコン、北京市)が業績低迷に苦しんでいる。今年6月中間期決算は、最終損益が5億4,500万元(約109億円)の赤字だった。赤字経営が続くなか、研究開発(R&D)投資を減らすとともに、研究開発スタッフのリストラを敢行した。
中間期は売上高が前年同期比33.4%減の1億1,400万元だった。同社は減収の理由について、サプライヤー網の影響を受けたほか、粗利益率が高く、信用力の高い顧客に販売先を絞り込んだためと説明した。
同社は2017年から22年にかけて赤字決算が続いており、6年間の累計赤字額は41億元を超えた。今年上半期分を加えると46億6,000万元超へと拡大した。
継続的な赤字経営は、研究開発に向けた先行投資を優先してきたことが背景にある。しかし、20年7月に上海証券取引所の科創板に上場した後も赤字は拡大を続けており、昨年末に米国に禁輸リストに加えられたことも重なって、今年は研究開発投資を削らざるを得なくなった。今年上期の研究開発費は4億8,260万元と、前年同期比23.3%減少した。
今年4月にはリストラ観測が浮上した。同社は上期の決算報告書の中で、同期にリストラを実施したことには触れず、「研究開発効率を高め、経営リソースの配置を見直した」と表記しているものの、6月末時点の研究開発スタッフ数は980人で、前年末から225人減少し、総従業員数に占める比率は79.5%から77.5%に低下した。
中国のIT関連情報サイトの芯智訊によると、巨大な財務圧力に直面した同社は今年4月、第3社割当増資を実施し、16億4,900万元を調達。18の機関投資家が引受先となった。その一方で、今年に入って、大口株主が持ち株を減らす動きが相次いだ 今年上半期は、ChatGPTに代表される生成AIを端緒とするAIチップブームを背景に、同社の株価が急騰し、一部の機関投資家の間で利益確定の売りが広がったためとみられる。
米国が昨年10月に発表した対中半導体輸出規制の新ルールにより、米同業大手のNVIDIA(エヌビディア)は最先端のAIチップの対中輸出が制限された、これは中国市場の国産AIチップに対する需要を喚起することとなったが、決算報告書を見ると、カンブリコンはAI生成コンテンツ(AIGC)によってもたらされた「AIチップの宴」を享受できていない。