アリババ、初の自社開発AIメガネを今週発表へ

中国IT大手、阿里巴巴集団(アリババ・グループ)が自社開発による初のAI(人工知能)メガネを今週中に発表する予定であることが、テック系メディア《智能涌现》の独自取材により明らかとなった。これにより、次世代ウェアラブル端末のAIメガネにアリババも参戦することとなる。

事情に詳しい関係者によれば、アリババの新型AIメガネは、音声アシスタント、音楽再生、通話、リアルタイム翻訳、会議メモなど、市場で一般的な機能をすべて搭載。さらに、アリババが展開するサービスとも深く統合される。高徳地図(地図アプリ)、支付宝(Alipay)、淘宝(ECサイト)などの技術チームも開発に参加しているという。

AI機能面では、基盤モデルとしてアリババの大規模言語モデル(LLM)「通義千問」を活用し、学習・健康分野ではブラウザアプリ「夸克(Quark)」が専門的なモデルのトレーニングを担当する。

ハードウェア構成では、Ray-Ban × Metaのスマートグラスを上回る性能になる見込みで、表示機能の有無に応じて2つのバージョンが用意される。特にディスプレイ付きの「AI+AR」モデルが優先的に開発されており、米Qualcomm(クアルコム)のSoC「Snapdragon AR1」と「恒玄BES2800」を組み合わせたデュアルチップ構成が採用される予定だ。

このAIメガネは、アリババが2023年末にAIの一般消費者向け事業を再編して以来、初の本格AIハードウェア製品であり、「アリババのAI to C戦略の延長線上にある」と社内関係者は語る。

アリババは昨年から通義アプリチームを「アリババ智能信息事業群」に移管し、AIスピーカー「天猫精霊(Tmall Genie)」のチームをQuarkチームと統合するなど、体制を整備。現在、AIメガネは天猫精霊のハードウェアチームとQuarkのAIチームが共同で開発を進めており、責任者はかつて華為技術(ファーウェイ)の複数のフラッグシップスマートフォンを手がけた宋剛氏が務めている。

現在市販されている多くのAIメガネは、装着感やバッテリー持続時間、視力矯正との兼ね合いなど課題が多く、機能も翻訳や録音、撮影といった基本にとどまる。そのため、一部の先進的な消費者層にしか浸透しておらず、大量生産や普及には至っていない。

実際の販売データもこの傾向を裏付けており、調査会社RUNTOによると、2025年第1四半期(1〜3月)における中国国内のスマートグラス(ARグラス含む)の販売台数は約11万6000台で、このうちAI搭載カメラメガネは1万6000台にとどまっている。

しかし、アリババのように多様なユースケースを持つ巨大インターネット企業が本格参入することで、市場構造に変化が生じる可能性がある。地図ナビ、QRコード決済、価格比較、旅行リマインダーといった日常生活に密着した機能が統合されることで、AIメガネの「実用性」と「必需性」が飛躍的に高まり、一般消費者の支持を得ることが期待されている。

また、ソフトウェア面でもQuarkのAIアシスタント機能が搭載される予定で、近年アリババは大規模言語モデルの応用において大きな進展を見せている。Quarkは単なる検索ブラウザから「スーパー検索枠(スーパーアプリ)」へと進化し、今ではエージェント型AIとしての役割も担っている。こうしたAI能力がメガネ端末に搭載されることで、AIメガネが真の意味での「パーソナルアシスタント」になる道が開かれる。

市場がまだ爆発的な成長期を迎えていない中でも、アリババ、小米(シャオミ)、百度(バイドゥ)、字節跳動(バイトダンス)などの大手企業や有力スタートアップが次々と参入しており、AIメガネ市場は本格的な普及の端緒に立っている。特に小米は6月に初のAIメガネを発表し、価格を1999元からとすることで一般消費者への訴求を強めた。

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