世界で進むガラス基板の開発競争、日本が先行も各国追い上げ

韓国のソウル経済新聞によると、日本の半導体パッケージ基板メーカー、新光電気工業(長野県長野市)はこのほど、22層のガラスコア基板を開発することに成功したという。ガラスの両面にそれぞれ11層の銅配線を積層し、高密度接続に必要な複雑な配線構造を形成した。
この成果の背景には、ガラス基板の量産における最大の障害の一つである「SeWaRe」問題を新光電気工業が克服したことがあるという。SeWaReは、日本語の「背割れ」に由来する言葉で、ガラス基板を切断または熱処理する過程で生じる微細な亀裂や内部の層間剥離を指す。
ガラスは本来、脆性が高い。そのため、こうした微細な亀裂が後続の熱サイクル試験で応力集中点となり、最終的にパッケージ全体の破損を引き起こす可能性がある。これは、ガラス基板の歩留まりを大きく制約する要因となっていた。
新光電気工業は、ガラス基板の端部にポリマー系の保護材料を塗布することで、熱負荷がかかった際に端部へ集中する応力を効果的に分散させた。これにより、熱サイクル後もSeWaRe欠陥の発生を抑制できる。同時に、TGV(Through-Glass Via、ガラス貫通ビア)技術も確立している。ガラス内部に微細な垂直貫通孔を形成し、その上に複数の絶縁層と銅配線層を構築できるとしている。
AIチップに不可欠な材料へ
物理的な特性から見ると、有機材料をガラス基板に置き換えることは単なる技術改良ではない。AIチップのパッケージサイズが物理的な限界に近づくなかで、必然的に選ばれる材料になりつつある。
従来の有機基板は、樹脂、ガラス繊維クロス、銅箔を積層して製造する。パッケージ面積が拡大すると、高温のリフロー工程で反りが急激に悪化し、接続の信頼性や集積歩留まりに直接影響する。
これに対し、ガラス基板はシリコンチップに近い熱膨張係数を持つため、加熱時の寸法変化が非常に小さい。表面の平坦性も有機材料を数桁上回り、より微細な回路形成と高密度な接続配置を可能にする。
信号品質の面でも、ガラスは有機材料より誘電損失が大幅に低い。AIアクセラレーターのシリアル・デシリアライザーの周波数が100ギガヘルツ(GHz)を超える場合、この特性は低消費電力と高い実効帯域幅に直結する。
さらに、ガラス基板はパネルレベルパッケージング(PLP)工程を採用できる。パネルサイズは500mm×500mmを超える場合があり、300mmウエハーの数倍に相当する有効面積を確保できる。これにより、より多くの広帯域メモリスタックや演算チップレットを集積するための物理的なスペースを提供できる。こうした総合的な優位性から、ガラス基板は単一フォトマスクの限界を超える大型パッケージングを支える中核材料と見なされている。
日韓米企業がガラス基板開発
現在、世界のガラス基板産業では明確な競争グループが形成されつつある。ただし、量産開始時期の確度は依然として最大の変数だ。
日本企業は技術蓄積で先行している。新光電気工業に加え、大日本印刷(DNP)は2025年12月、埼玉県にTGVガラス基板の試作ラインを建設した。26年から顧客へのサンプル供給を開始し、28年の全面量産を目標としている。
日本のディスプレー用ガラス大手AGCも、ガラスコア基板材料の開発を継続しており、産業チェーンの上流で重要な支援を提供している。
韓国では、サムスン電機が、日本の住友化学グループ傘下企業Dongwoo Fine-Chemとの合弁会社GlaSSEMを通じて追い上げを進めている。GlaSSEMの登録資本金は約4821億ウォン(約482億円)。サムスン電機が66%、Dongwoo Fine-Chemが34%を出資している。生産拠点は韓国・平沢市に置かれ、サムスン電機の基板設計・量産技術と、住友化学の材料・工程技術を統合する計画だ。
ただ、韓国メディアThe Elecによると、GlaSSEMの設備調達スケジュールは何度も延期されている。試作品は、世界的な通信チップ顧客1社による信頼性認証に合格できず、新たな試作品の再開発と再提出が必要になったという。
このため、工場建設は27年下半期までずれ込み、量産開始も28年、場合によってはそれ以降に延期される可能性が出ている。
米国企業では、半導体大手のIntel(インテル)がガラス基板分野への投資開始時期が早く、最も深く展開している企業だ。
インテルは14年から、組立・テスト技術開発チームを通じてガラス基板の研究開発を進めてきた。23年9月には、ガラス基板を先端パッケージングのロードマップに組み入れた。
今年1月に開かれた「NEPCON Japan」で、EMIB(埋め込み型マルチダイ・インターコネクト・ブリッジ)を集積した業界初の厚型ガラス基板サンプルを展示した。パッケージサイズは78mm×77mm、シリコン面積は約1716mm²。10-2-10の積層構造、すなわち上下にそれぞれ10層のRDL(再配線層)、中央に2層のガラスコアを配置し、総厚は800μm、バンプ間隔はわずか45μmだった。
インテルは、このサンプルで「No SeWaRe」、つまり微細亀裂ゼロを実現したと説明している。これは、量産時の信頼性確保に向けた重要な一歩となる。また、米ニューメキシコ州リオランチョにある工場は、世界初のガラス基板量産拠点となる可能性がある。商用展開の目標時期は30年前後だ。
中国企業も参入
中国本土企業も積極的に参入している。ディスプレイ大手の京東方科技集団(BOE)はガラス基板の量産技術に関する検証と実現可能性評価を完了し、関連事業を正式に開始した。
維信诺(Visionox)も26年から大規模な投資を始め、材料、部品、製造装置を含むサプライチェーンの構築を進めている。PCBメーカーの安捷利美維電子は試作ラインを設置した。OSAT企業の雲天半導体は、ガラス基板パッケージング能力を背景に、華為技術(ファーウェイ)の次世代AIチップ向けガラス基板サプライチェーンに組み入れられたという。
市場調査会社の予測によれば、世界のガラスコア基板市場は26年の1億2800万ドル(約202億7520万円)から、33年には10億3600万ドルへ成長する見通しだ。年平均成長率は34.8%に達すると予測されている。




