長江存儲のIPO申請が受理、資金調達額・純利益で長鑫科技を上回る

上海証券取引所の公式サイトの21日発表によると、中国のメモリーメーカーである長江存儲(YMTC、湖北省武漢市)が科創板(スターマーケット)への新規株式公開(IPO)申請が正式に受理された。同社は330億元(約6,900億円)の調達を予定しており、科創板の開設以来、過去最大となる。これにより、中国DRAMストレージチップの最大手である長シン科技集団股フン(CXMT、安徽省合肥市)に続いて、中国の国産メモリ半導体を代表する「二強」が科創板にそろうことになる。
長江存儲が公開した目論見書の財務データによると、2026年第1四半期(1~3月)の売上高は470億4,200万元、親会社の株主に帰属する純利益は333億7,900万元に達した。四半期だけで、25年通年の純利益の約2.35倍を稼ぎ出した計算になる。
さらに、売上総利益率(粗利率)は78.73%まで急上昇した。この利益水準は、中国国内の半導体業界でも突出している。純利益は長シン科技の247億6,200万元を上回ったほか、多くのA株上場企業の年間純利益さえも超える規模となっている。
こうした業績急拡大の背景には、半導体メモリ市場のサイクルをまたいだ大胆な投資戦略がある。世界のメモリ半導体市場はサイクルの底にあった23年当時、長江存儲の売上高は187億4,400万元、親会社の株主に帰属する純損失は191億8,100万元に達し、NAND Flash製品の粗利率はわずか1%だった。
それでも同社は生産能力を縮小しなかった。むしろ設備投資を継続し、増産を進めた結果、26年3月末時点で、中国本土最大の3D NAND Flashウエハー生産拠点を構築するまでに至った。
市場が低迷している時期に積み上げた生産能力は、市況が回復すると一気に利益を押し上げる「レバレッジ」として機能した。24年にメモリ市場が回復すると、長江存儲の売上高は452億300万元、純利益は67億7,100万元まで回復。粗利率も34%に戻り、黒字転換を果たした。さらに25年には売上高が631億8,500万元、純利益が142億1,100万元へと拡大し、粗利率も37%まで上昇した。23~25年の売上高の年平均成長率(CAGR)は、実に83.60%に達している。
AIが牽引する「メモリ特需」
今回のメモリ市場サイクルを押し上げている最大の要因は、AIによるコンピューティング需要の急拡大だ。台湾の市場調査会社TrendForce(トレンドフォース)によると、26年第1四半期の世界のNAND Flash契約価格は前四半期比55~60%上昇。第2四半期には上昇率がさらに拡大し、70~75%に達した。AI推論システムやハイパースケールデータセンターからの旺盛な需要を背景に、メモリ半導体の供給は引き続き逼迫している。
長江存儲が引用したTrendForceのデータによると、2026年第1四半期、同社は世界のNAND Flashメーカーの中で、売上高・出荷数量の双方で世界3位、中国国内では1位となった。
TrendForceはまた、2030年には世界のエンタープライズ向けNAND Flash需要が132万5,000PBを超えると予測している。2025~2030年の年平均成長率は36.1%に達する見通しで、半導体メモリ市場の中でも最も速い成長が期待される用途になるという。
国家ファンドや大手銀行系が出資
豪華な株主構成も市場の注目を集めている。目論見書によると、長江存儲には現在、支配株主および実質的支配者は存在しない。筆頭株主の湖北長晟が26.54%を保有し、中国国家集成電路産業投資基金(国家IC産業投資基金)の第1期・第2期を合わせた持株比率は約23%に達する。さらに、中国の5大国有銀行傘下の投資会社もそろって出資している。
中国A株市場では、長江存儲に出資する上場企業が、早くも投資家の注目を集めている。長江存儲の増産は、同社に出資する企業だけでなく、半導体製造装置などのサプライチェーン企業にも恩恵をもたらす可能性がある。
設備関連では、北方華創、中微公司、拓荊科技など中国国産の半導体製造装置メーカーが、長江存儲の生産能力拡大に伴う入札で重要なシェアを獲得している。さらに、半導体関連企業の至純科技も、長江存儲との業務提携をすでに確認している。
長江存儲のIPOは、単なる大型上場案件にとどまらない。AI(人工知能)需要によって世界的にメモリ半導体市場が拡大するなか、NAND Flashの国産化を進めてきた同社が巨額の資金を得ることで、さらなる生産能力拡大と技術投資につながる可能性がある。
今後は出資企業だけでなく、同社の増産投資を取り込む半導体製造装置・素材メーカーを含め、関連銘柄への波及が中国株市場の新たな焦点となりそうだ。




