ベトナム半導体産業に最大の追い風、米国が後押し

米国がいま、ベトナムの半導体産業育成を後押ししている。トランプ大統領は2月20日、ベトナムを戦略的輸出管理リストから除外する方針を示した。冷戦期以降、ベトナムは制限対象に含まれてきたが、同国はこれまでの半導体の組立・後工程中心の役割から、製造や設計分野へと踏み出すことが可能になる。
戦略的輸出管理リストから除外されれば、米国企業から先端技術を購入することが可能になる。米国の半導体サプライチェーンにおける新たな協力パートナーとして再定位する道が開けることになる。トランプ氏は同時に、「強く、独立し、自立した繁栄するベトナム」へのコミットメントを改めて強調した。
騰訊網によると、米ワシントンのシンクタンクである戦略・国際研究中心(CSIS)の「米国イノベーション再興」プロジェクト責任者スジャイ・シヴァクマール氏は「この決定は、ベトナムが後工程の組立拠点から、上流の製造・設計パートナーへと転換する節目だ」と指摘する。米国はベトナムが先端チップ製造に不可欠な高性能装置やソフトウェアを取得できるよう障壁を取り除きつつあるという。
米越関係は2023年、バイデン前政権下で「包括的戦略的パートナーシップ」に格上げされた。トランプ政権はその路線を引き継ぐ形だ。
1月にハノイで開かれた半導体会議に出席した米半導体工業会(SIA)会長のジョン・ニューファー氏は、「訪れるたびに進歩に驚かされる」と述べ、米Intel(インテル)、韓国サムスン電子、米Qualcomm(クアルコム)、Amkor Technology(アムコー)、Marvell Technology(マーベル)など、すでにベトナムで事業を展開する会員企業の名を挙げた。
2月20日にはベトナムの最高指導者がワシントンを訪問し、輸出管理リストからの除外に向けたトランプ大統領の確約を取り付けた。その5週間前には、ベトナム初の国産チップ工場の起工式にも出席している。この工場は国営大手のViettelが運営し、2027年末までに32ナノメートル(nm)半導体の試験生産を開始する計画だ。32nm品は自動車、通信ネットワーク、産業機器などに幅広く使われる。
ベトナムは最先端の2nmや3nmを無理に追うのではなく、まずは産業基盤をゼロから築く戦略を選択した。ファム・ミン・チン首相は1月15日、オランダの半導体装置大手ASMLのエドワード・スティップハウト上級副社長と会談した。ASMLは先端チップ製造に不可欠な露光装置を製造する企業であり、米国は同社の対中輸出制限を求めてきた経緯がある。続いて財務相もASML代表団と会い、ベトナムでの研修センター設立や正式拠点の開設を協議した。起工式からASMLとの接触、そしてホワイトハウスでの会談へと続く一連の動きは、周到に準備された戦略の一環とみられる。
現在、ベトナムの半導体エンジニアは約7,000人と少ない。政府は30年までに5万人へ拡大する目標を掲げる。クアルコムは同国に世界第3の研究開発拠点を設置し、アムコーも16億ドル(約2518億円)を投じて同社最大規模の半導体パッケージング工場を建設した。
アナリストは、ベトナムの世界半導体パッケージ市場シェアが22年の1%から32年には約9%へ拡大すると予測する。半導体協力は、今回の訪米で交わされた数多くの合意の一つにすぎないが、その影響は長期に及ぶ可能性が高い。半導体産業の構築には、数十年単位の投資、人材育成、インフラ整備が必要だ。米国にとってはサプライチェーン多元化の一環であり、ベトナムにとっては世界で最も付加価値の高い産業の一角を占めるための歴史的好機となるとみられる。



