SKハイニックス内部分析が流出、DRAM不足は2028年まで継続か

韓国半導体大手のSKハイニックスの内部分析資料が流出し、世界のメモリ市場が深刻な需給不均衡に直面している実態が明らかになった。資料によると、HBM(高帯域幅メモリ)や次世代メモリ「SOCAMM」を除く標準DRAMの供給逼迫は2028年まで続く見通しで、スイスの多国籍投資銀UBSがこれまで予測していた27年第1四半期(1〜3月)よりも、さらに厳しい内容となっている。

SNSプラットフォームXで、ユーザーの@BullsLabが先週共有したスクリーンショットによると、SKハイニックスは標準DRAMの生産能力拡大が大きく制約されると分析している。各社の在庫水準は最低水準まで切り下がっており、生産能力の増加も過去の回復局面と比べて限定的になる見通しだ。

AI(人工知能)需要の急増が、今回の「スーパーサイクル」を押し上げる最大の原動力となっている。SKハイニックスは、AIサーバーの市場シェアが25年の38%から30年には53%へと急拡大し、DRAM需要を24%押し上げると見込んでいる。

この需給構造は、世界のテクノロジー産業チェーン全体に大きな影響を与えるとみられる。ウォール街の分析によれば、UBSは今年第4四半期(10〜12月)のDDR契約価格が前期同期比35%上昇し、26年第1四半期(1〜3月)にはさらに30%上昇すると予測している。米Apple(アップル)などの大手テック企業もコスト圧力に直面しており、サムスン電子およびSKハイニックスとの長期供給契約は26年1月に期限を迎える見通しだ。

供給面の制約

供給面では、DRAMの供給制約の根本要因として、生産能力拡張に長い時間を要する点が挙げられている。新たなDRAM工場は建設から本格稼働まで数年を要し、追加供給が市場に出回るのは早くても28年になるとされる。既存工場の転用も容易ではなく、DDR4からDDR5への切り替えや、NANDプロセスからDRAM生産への転換には長い調整期間が必要となる。このため、短期的に需給ギャップを解消することは困難だ。

在庫面でも逼迫が進んでいる。SKハイニックスの財務担当副社長である金祐賢氏は、前回の決算説明会で「26年はHBMだけでなく、DRAMやNANDの生産能力もすでに完売しており、26年分の汎用メモリを前倒しで購入する顧客も出ている」と明らかにした。

需要面では、AIの急速な普及がメモリー需要の構造を大きく変えつつある。SKハイニックスは、AIサーバー比率の上昇により、サーバー向けDRAM需要が大幅に拡大するとみている。PC市場でもAIの影響は顕著で、26年のPC出荷台数は25年と横ばいが予想されるものの、AI PCの比率は38%から55%に拡大し、1台当たりのDRAM搭載量増加につながる見通しだ。

NANDフラッシュ市場も成長局面に入るとみられている。サーバー向けeSSDの需要は前年比36%増、NAND全体の需要も18%増が予測されている。一方で、メモリメーカーの投資はサーバーDRAMやHBMに集中しており、NANDの供給は相対的に不足し、価格上昇圧力が続く可能性が高い。

UBSはこれまで、今年第4四半期にDDR契約価格が35%、NANDが20%上昇し、26年第1四半期もそれぞれ30%、20%の上昇が続くと見込んでいた。しかし、SKハイニックスの内部分析は、供給逼迫が28年まで続く可能性を示しており、メモリ価格の上昇局面が市場予想を上回って長期化する可能性を示唆している。

こうした中、アップルも影響を受けそうだ。報道によれば、アップルとサムスン電子、SKハイニックスとの長期供給契約は26年1月に期限を迎え、両社は来年1月以降、アップル向けメモリチップの供給価格引き上げを計画しているという。

需給逼迫への対応として、SKハイニックスは生産能力の拡充を急いでいる。HBM専用のM15X工場は2年間の建設を終え、前倒しで稼働を開始し、来年から本格量産に入る予定だ。27年上半期に着工予定の龍仁(ヨンイン)ウエハー工場など、先端生産インフラへの投資を進め、AI向けメモリ需要の拡大に対応する構えだ。ただ半導体工場建設には長いリードタイムが必要で、これらの新規投資が短期的に需給の緩和につながるかどうかは不透明だ。今後は、メモリ価格の動向と、それが下流産業に与える影響が注視されることになりそうだ。

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