中国、ディスプレイパネル向け偏光板の国産化が加速

近年になって世界のディスプレイパネル生産能力が中国大陸へと集中する中、コア光学部材である偏光板産業が大きな構造転換期を迎えている。戦略的買収や生産能力の拡張を通じ、中国メーカーは世界の産業構造を主導的に再編すると同時に、最終製品の差別化競争においても存在感を強めている。
2021年に杉金光電がLG化学の偏光板事業を買収して以降、中国の偏光板産業は急速な発展軌道に入った。25年には三利譜が住友化学の一部生産ラインを買収し、恒美光電も昊盛グループの支援を受けてサムスンSDIの生産ラインを取得。中国企業の国際的な主導力は一段と強化された。
群智諮詢のデータによると、25年の世界偏光板市場は明確な競争序列が形成されている。杉金光電は30%超の生産能力シェアで世界首位を維持。恒美グループは旧SDIラインの買収によりシェア20%を突破し、2026年には26%へ拡大する見通しだ。三利譜も買収後にシェアを5%未満から世界3位へと押し上げ、「二強一強」の競争構図が確立された。
Omdiaの報告もこの傾向を裏付ける。24年時点で中国メーカーは世界総生産能力の65%を占め、27年には80%近くに達する見込みだ。25年には世界の70%以上のディスプレイパネルが中国で生産される見通しで、偏光板産業の中国集中はサプライチェーン上の必然となっている。
産業集中度の上昇に伴い、パネルメーカーと偏光板メーカーの関係は「陣営化」が進む。大手LCD(液晶ディスプレイ)パネルメーカーと偏光板企業の間では、戦略提携や共同開発を軸とした深い協業体制が形成され、資本面での結び付きも強まる可能性がある。
京東方(BOE)は杉金光電と戦略的提携を結び、25年には同社のLCD用偏光板需要の約50%を杉金光電が供給。共同開発したSTW高級パネル向け偏光板は製品競争力を高めている。恒美光電の統合完了後は、2026年に京東方向けシェアが20%を超え、上位2社で7割超を占める見通しだ。
TCL華星はよりバランス型の調達戦略を採用。恒美光電は同社最大のLCD偏光板供給元となり、シェアは40%超に達する。一方で他社からの調達も拡充し、供給網の柔軟性と強靭性を高める方針だ。恵科はコスト重視の戦略を堅持し、三利譜との協業を強化。国産材料の導入を通じ、コスト最適化を図る。
規模拡大と並行し、中国大手は技術開発と高付加価値分野への投資を加速している。杉金光電は大型・高級LCD分野を強化し、110~116インチ超大型テレビ用偏光板を安定供給。中小型では低抵抗・広視野角・超薄型化を進める。OLED(有機ELパネル)分野でも大型テレビから中小型用途まで展開し、高透過・超低反射・アイケア型など次世代製品へと高度化を進める。車載ディスプレイ向けにも包括的なソリューションを提供する。
同社は世界最先端の生産ライン10本を保有し、うち6本の超広幅前工程ラインが競争優位を形成。2600ミリ幅ラインは115インチ超製品の生産を可能にする。顧客近接型のRTPラインも効率性やコスト、協業面で強みを発揮する。
三利譜はコア技術の自立を重視し、PVA延伸から複合、設備統合まで一連の技術を掌握。中小型LCD向けでは有効厚69ミクロンまで薄型化を実現し、OLED分野では3DフレキシブルAMOLED円偏光板を量産。大型テレビ向けでもUV接着剤や疎水性材料の量産で弱点を補完した。今後はスマートフォン用OLEDや車載、大型テレビを重点分野とし、材料国産化とサプライチェーン効率化を同時に進める。
深紡織もOLEDテレビ・スマートフォン用偏光板の量産をいち早く実現。2500ミリ超広幅ラインは世界的にも希少で、高世代パネルや超大型製品に対応する。年産約1800万平方メートルの新ライン建設も進め、高付加価値製品の供給能力を高める。
さらに、緯達光電は高耐久偏光板に注力し、第3期プロジェクトが量産段階に入った。車載用途向けの染料系・ヨウ素系製品を展開し、EVの多画面化や大型化、HUD表示など新需要に対応する。2025年12月には鴻茂光電が高級LCD・OLED偏光板ラインを着工し、OLED分野の技術ボトルネック突破を目指す。
一方、上流材料分野では依然として課題が残る。偏光板の主要原材料は保護膜、表面処理膜、PVA膜、補償膜、離型膜、PSA感圧接着剤の「五膜一膠」から構成されるが、国産化率は概ね10%未満にとどまる。
この課題に対し、企業は積極投資を進めている。昊盛グループ傘下の新美材料はLG化学の光学機能膜事業を買収し、保護膜・表面処理膜技術を中国に導入。合肥では大型光学機能膜プロジェクトを建設し、満産時には表面処理膜年産5000万平方メートル、保護膜8000万平方メートルなどの能力を持つ見通しだ。
天禄科技はTAC膜事業に24億元を投資し、2026年上半期の設備導入を予定。楽凱フィルムも楽凱光電材料の買収を通じTAC市場に参入し、国内で唯一TFT型光学TAC膜を量産できる企業となった。年産2400万平方メートル規模の第3ラインは中小型ディスプレイ向けを主力とする。
こうした取り組みにより、偏光板原材料の国産化は点から面へと広がりつつある。規模主導から技術革新とサプライチェーン強化を両輪とする段階へと移行する中、中国偏光板産業はOLEDや車載ディスプレイなど高付加価値分野での競争力を一段と高め、ディスプレイ材料産業の未来像を塗り替えようとしている。



