米国、TSMC南京工場の「特別免除」を撤回か=米紙報道

米国時間2日付ブルームバーグの報道によると、米国政府は半導体受託生産(ファウンドリー)世界大手の台湾積体電路製造(TSMC、台積電)に対し、同社の南京工場(江蘇省南京市)に付与していた「最終利用者検証(VEU)」資格を撤回すると通知したもようだ。これにより、今後TSMC南京工場が米国製の半導体製造装置や材料を調達する際には、米国政府への許可申請が必要となる。

すでに韓国サムスン電子やSKハイニックスの中国工場に対する同様の免除措置も撤回されており、120日後に失効する見通しだ。

TSMCに対する決定は「連邦官報」には、3日現時点では掲載されていない。VEU資格が失効すれば、これらの企業の中国工場に半導体関連製品を供給する米国メーカーは、米国商務省の輸出許可を都度取得する必要が生じる。対象は最先端の製造装置に限らず、交換部品や化学薬品など生産に不可欠な消耗品も含まれる。

TSMCは声明で「当社は米国政府から通知を受けており、南京工場のVEU資格は2025年12月31日に撤回される予定だ」とし、「現在、状況を精査し適切な対応を進めている。米国政府との協議も行っているが、南京工場の継続的な操業に全力を尽くす」と述べた。

米国商務省は、既存工場の操業維持のために必要な輸出許可は認めるものの、能力拡張や先端技術の導入は許可しない方針を示している。ただし、従来の「包括的免除」から「案件ごとの申請」に切り替わることで、許可取得までの不確実な待機時間が発生することは避けられない。

関係者によれば、米当局は審査負担を軽減する方法を検討中であり、膨大な申請件数の滞留が課題となっている。米国商務省の担当者は、現在のライセンス申請の滞りは過去30年以上で最も深刻だと指摘している。今回の措置により、米当局は年間で約1000件の追加申請を処理する必要が生じる見込みだ。

TSMC南京工場は現在、月産2万枚規模の先端プロセス能力(主に16ナノメートル(nm)と12nm)を持つが、これはTSMC全体の生産能力のごく一部に過ぎず、売上高比率も数%程度とされる。そのため影響は限定的との見方もある。さらに、28nmやそれ以上の成熟プロセス装置は対中輸出規制の対象外であるため、TSMCの南京工場や松江工場の成熟プロセス生産は影響を受けない。

ただし、米国がサムスン、SKハイニックス、TSMCの中国工場に対する「無期限免除」を撤回する決定を発表し、120日の猶予期間を設けた背景には、中国との貿易交渉における交渉材料とする狙いがあるとの見方も根強い。トランプ政権の第1期目も同様の手法を繰り返してきた経緯がある。

さらに、この決定は韓国との関係にも影響を及ぼす可能性が高い。韓国にとってサムスン電子とSKハイニックスは経済の二大支柱であり、中国は最大の半導体輸出先である。韓国メーカーの中国向け輸出は全体の約60%を占め、中国国内工場の生産能力も他国を大きく上回る。

米国の措置は、TSMC・サムスン・SKハイニックスの中国での将来的な投資を抑制する一方で、各社の利益を直接的に損なうことにもなる。台湾当局が強く発言できないとしても、韓国政府が黙認する可能性は低く、今後の展開は流動的だ。

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