ベトナム、半導体産業振興に電力不足がボトルネック
中国の電力大手に技術支援呼びかけ
ベトナムが米国企業や韓国企業などの誘致などで半導体産業振興を進めるに当たって電力不足がボトルネックとなっている。米中デカップリンが進む一方で、ベトナムは国内の電力供給の安定化のため、中国にグリーン発電・送電技術の支援を求めている。
ベトナムのチャン・ルウ・クアン副首相はこのほど、ベトナムを訪問した中国の大手電力会社のトップらと会談し、化石エネルギーからグリーンエネルギーへの転換が進む中国が、この転換プロセスにおいてベトナムの電力業界をサポート・支援していくよう求めた。また、中国の電力企業がベトナムで進めるスマートグリッドや水力発電所の建設事業において、中国の革新的な技術や先進技術を採り入れて、ベトナムの電力施設のレベルアップを後押ししていくよう呼び掛けた。
ベトナムは石炭火力発電が主力だが、発電用石炭が極度に不足しており、中国をはじめとする周辺国に電力供給を求めている。中国は昨年6月、ベトナムへの電力供給を再開した。
ベトナムが現在、建設を進める発電所は技術的な制約により、火力と水力が中心だ。しかし将来的には太陽光発電への切り替えが必要となるだけに、電力供給だけでなく、技術面においても、高い蓄電技術を持つ中国への支援を切望している状況だ。
ベトナムはここ2年、半導体産業を戦略業種に掲げ、韓国サムスン電子や米NVIDIA(エヌビディア)を始めとする多くの半導体メーカーを誘致した。半導体製造は、回路の線幅をより細くする微細化に伴い電力消費が急増しており、電力の安定確保はベトナム政府にとっての喫緊の課題だ。
ベトナムは昨年5月から6月にかけて深刻な電力不足に見舞われ、計画停電により多くの企業で業務に支障が出た。昨年は電力不足による損失が14億米ドル(約2145億円)と、ベトナムの国内総生産(GDP)の0.3%に相当した。
■集積する世界の半導体関連企業
ベトナムには2014年以降、韓国LG電子、サムスン、EMS(電子機器の受託製造サービス)世界最大手、台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)傘下で、米アップルの主要サプライである富士康工業互聯網(フォックスコン)がベトナムに工場を設立している。
ここ2年間では多くの半導体チップ製造大手も集まってきている。サムスン電子は22年、ベトナムで半導体部品工場の建設に33億米ドル投資すると発表した。
バイデン米大統領は23年9月、初めてベトナムを訪問し、現地でNVIDIAとソフトウェア会社FPTなどがベトナムの政府や企業関係者らと会談。NVIDIAのベトナムへの投資規模は2億5000万米ドルに達すると予想されている。
またMicrosoft(マイクロソフト)とベトナムのAIフィンテック企業、Trusting Socialは、ベトナム向けにAI生成ソリューションを開発することで合意した。