SMICの7~9月期は減収減益、設備投資拡大で「半導体国産化」推進
中国の半導体受託製造(ファウンドリー)最大手の中芯国際集成電路製造(SMIC、上海市)が9日発表した2023年第3四半期(7~9月)決算は、売上高が前年同期比10.6%減の117億8,000万元(約2,455億5,800万円)、純利益が78.4%減の6億7,800万元の減収減益だった。川下需要の縮小に、米国の対中半導体輸出規制強化が重なり、業績悪化を余儀なくされた。
米調査会社ガートナーが7月に発表したリポートによると、2023年は世界のスマートフォン出荷量が前年比8.0%減、パソコン出荷量が12.3%減となる見通し。SMICの共同最高経営責任者(CEO)である趙海軍氏は、10日の四半期決算内容開示後のアナリスト向け電話会議で、「(半導体)市場にはいまだ皆が期待していたようなU字型、あるいはV字型の回復がみられず、停滞の根底にある」と説明。「業界内では当初、半導体不況の期間を1年とみて、年末の回復を予想していたが、現状でみれば不況は2年間続くだろう」と悲観した。
SMICは近年、中国政府が推進する「半導体国産化戦略」の柱としての役割を狙い、足元で増産投資を続けている。今年の設備投資は、第1四半期が12億5,900万米ドル、第2四半期が17億3,200万米ドル、第3四半期が21億3,500万米ドルに増やしており、2019年は10%足らずだった半導体製造に必要な生産設備や原材料、部品の自給率は、40%を超えた。
ただ市況に逆らった強気な増産投資の副作用はすでに表れ始めており、9月末の稼働率は77.1%と、前年同期の92.1%から15ポイント低下した。設備投資の拡大で減価償却コストも膨らみ、第4四半期の粗利益率は16~18%と、第3四半期の19.8%から低下すると見込んでいる。
まさに、自身の業績を犠牲に中国の半導体国産化をけん引している格好だが、同じく米国の制裁対象となっている通信機器大手、華為(ファーウェイ)は、SMICを苦境から脱出させるカギを握る存在となり得る。
SMICの今年7~9月決算では、スマートフォン向け半導体の売上高が全体の25.9%を占めた。華為は、中国国内で製造した先端半導体を搭載した新型スマートフォンを8月末に発売し、米制裁下のスマホ市場で復活を遂げつつある。調査会社カナリスによると、華為の新機種「Mate60」シリーズは11月7日現在で250万台を売り上げた。消息筋によると、華為は2024年のスマホ出荷目標を6,000万~7,000万台に設定しおり、中国製プロセッサの巨大な調達需要を創出するとみられる。
■麒麟900Sを製造かは不明のまま
Mate60に搭載される中国製プロセッサ「麒麟900S」は、米国が主導する対中半導体輸出規制下にある7ナノメートル(nm)技術で製造されており、SMICが深紫外線リソグラフィー装置(DUV)で多重露光させる独自の技術で実現させたともされている。ただ、どの企業が受託製造を担っているかを含め詳細な情報は不透明なままで、SMICの7~9月決算報告書からは同社が「麒麟900S」の受託生産を始めたかどうかを判断することは難しい状況だ。