長シン科技、アップルへのメモリー供給を拒否か

国内顧客を優先、世界の価格交渉にも影響か

中国のメモリーメーカー大手、長シン科技(CXMT)が、米Apple(アップル)へのメモリー供給を拒否したことが明らかになった。海外サーバーメーカーからの受注も断ったという。中国メディアの観察者網が10月26日、報じた。人工知能(AI)向け需要の急増でメモリーの供給が逼迫するなか、同社は限られた生産能力を中国国内の顧客に優先配分する戦略を取っている可能性がある。

テクノロジー専門メディアのWccftechは10月25日、長シン科技がアップルへのメモリー供給を拒否したほか、社名非公表の海外サーバーメーカーからの注文も断ったと報じた。観察者網が長鑫科技に問い合わせたところ、記事掲載時点で回答は得られていない。

通常、メモリーチップメーカーは世界の大手顧客を獲得するため、大幅な値引きを提示し、長期契約の確保を目指す。ところが今回、アップルが長シン科技に対し、米マイクロン・テクノロジー、韓国サムスン電子、SKハイニックスの提示価格を下回る条件での調達を打診したものの、拒否されたという。別の海外サーバーメーカーも長シン科技のDDR5メモリーの購入を希望したが、同様に受注を断られた。同社の副社長は、拒否の理由について現時点では判断できないとしている。

半導体業界の複数の関係者は、長シン科技の判断について、生産能力が限られるなかでの戦略的な選択との見方を示す。AI向け需要の急増を背景にメモリーチップは世界的に供給不足となり、主要メーカーは相次いで増産投資を進めている。こうした状況下で、長シン科技はDRAM(半導体メモリーの一種)の自給率向上を目指し、当面は海外市場への供給よりも中国国内の需要を優先する方針とみられる。

調査会社ヨール(Yole Group)のアジア太平洋地域責任者、黄茂原氏によると、長シン科技の生産能力の約9割は、華為技術(ファーウェイ)、小米(シャオミ)、聯想集団(レノボ)など中国ブランド向けに供給されている。同社は約10年前から国内需要の充足を目標に掲げ、サムスン電子やSKハイニックスといった海外メーカーへの依存度を引き下げる取り組みを続けてきた。

長シン科技が国内顧客への供給を優先すれば、アップルなど海外顧客にとっては、韓国や米国の大手メーカーとの価格交渉で選択肢が狭まり、メモリーの契約価格が上昇する可能性がある。一方、中国国内の顧客は、米国の輸出規制の影響を受けにくい安定的な調達先を確保できる。地政学的リスクやサプライチェーン(供給網)の寸断に対する耐性も高まるとみられる。

長シン科技は8月に公表した決算資料で、DRAM製品が小米、伝音控股(トランシオン)、栄耀(HONOR)、OPPO、vivoなどのサプライチェーンに採用されたと説明した。観察者網によると、同社が独自開発した最新世代の低消費電力メモリー「LPDDR6」は量産段階に入り、初期製品は小米の折り畳み式フラッグシップスマートフォン「小米18 Fold」に搭載される予定だという。

半導体業界を長年追ってきた微駆科技の元総経理、呉金栄氏は、長鑫科技の総生産能力は早ければ2027年にも米マイクロンを上回り、世界のメモリーメーカー上位3社に入る可能性があると分析する。

市場調査会社の集邦諮詢(TrendForce)によると、長シン科技のDRAMウエハー生産能力は月産約32万枚。2027年には約42万枚に増える見通しだ。別の予測では、2028年末までに月産50万~60万枚に拡大する可能性もある。

調査会社カウンターポイント・リサーチによると、売上高ベースでみた長シン科技の2026年第2四半期の世界DRAM市場シェアは10%に達し、前年同期の4%から上昇した。順位は世界4位で、サムスン電子が38%、SKハイニックスが25%、マイクロンが24%と続く。

技術開発でも進展が続く。長シン科技は9月、第5世代DRAM技術プラットフォームの量産開始を発表し、同プラットフォームを採用した大容量の「LPDDR5X」新製品を投入した。従来世代の同種製品と比べ、性能を50%向上させたとしている。独自の4重露光技術を活用し、メモリーアレイの活性領域のハーフピッチを11.95ナノメートル(nm)まで微細化した。世界最先端の量産メモリープラットフォームに近い水準という。また、メモリーセルの蓄電容量を確保するための構造では、深さと幅の比率を45対1に高めるとともに、メモリセルの高さを低減した。

10月には、記憶素子の高密度化につながる「4F²」DRAMアーキテクチャーの研究開発の進展も公表。ハイブリッドボンディング技術の開発も進めており、2026年末までに同アーキテクチャーを組み込んだ次世代のDDR5 RDIMMサーバーメモリーを投入する計画を明らかにした。

一方、長シン科技は国内の競合である長江存儲科技(YMTC)との競争にも直面している。NAND型フラッシュメモリーで世界3位に浮上した長江存儲は、DRAM分野への進出も進めている。

報道によると、同社はLPDDR5の開発を進め、顧客向けに技術評価用サンプルを出荷している。武漢市の第3期工場は2026年末ごろの稼働を予定しており、将来的には生産能力の半分ずつをDRAMとNAND型フラッシュメモリーに振り向ける計画だ。DRAMの初期生産能力は月産約2万5000枚となる見込み。

AI需要の拡大を背景に、メモリー市場では供給能力の確保が競争力を左右する局面に入っている。長シン科技が国内顧客を優先しながら生産能力の拡大と技術開発を進めれば、中国市場での国産メモリーの存在感が高まる一方、世界市場では主要メーカー間の価格交渉や供給構造にも影響を及ぼす可能性がある。

Tags: , , , ,

関連記事