韓国半導体大手2社がAI導入を加速、研究開発から設備、KPIまで変革

韓国サムスン電子とSKハイニックスが、研究開発(R&D)や製造工程へのAI(人工知能)導入を加速させている。さらに、従業員の主要業績評価指標(KPI)までAIの導入状況と連動させる動きが出ている。
韓国メディアによると、業界関係者は12日、SKハイニックスが清州にある半導体後工程の生産ラインで、AIシステムの段階的な導入を開始したと明らかにした。対象となる具体的な設備は公表されていない。同社は現在、設備の生産性能に加え、AIシステムが実際の生産環境で発揮する有効性と信頼性を評価している。評価作業は年末までに完了する見通しだ。
ある業界関係者によると、SKハイニックスで設備検証を担当する従業員のKPIは、AIソフトウエアの検証と導入の成否に直接連動するよう設定されている。AIの活用によって生産歩留まりを高めた成果が、エンジニアの業績評価に反映されることを意味する。
AIエージェントは、重要設備の機能を自動で設定・操作できる。これにより工程時間を短縮し、無人運転を支援することが可能だ。また、オペレーターの経験差によって生じる歩留まりの変動も最小限に抑えられる。
SKハイニックスは、2030年までに自律型半導体製造工場を構築する目標を掲げている。同社の執行副社長兼デジタルトランスフォーメーション(DT)責任者である都承勇氏は、今年3月に開催された米半導体大手NVIDIA(エヌビディア)のカンファレンス「GTC 2026」で、AI主導の製造が必要だと強調した。同氏は、AIメモリの需要が急速に拡大し、半導体の生産能力を上回っていると指摘した。
新たなウエハー工場を建設するだけでは需要に対応できない。品質、コスト、生産速度のバランスを取るには、人間の経験や従来型の自動化工程を超える、より複雑な運用体系が必要になるという。
サムスンもAIエージェントを新規設備の標準仕様に
サムスン電子も、半導体製造事業へのAI導入を積極的に進め、生産効率の向上を目指している。業界関係者によると、同社は設備メーカーに対し、新たに発注する設備へAIエージェントを標準搭載するよう求めている。
ある関係者は、サムスンがこれまで安全性や信頼性への懸念からAIに対して比較的慎重な姿勢を取っていたが、最近になって戦略を転換したと説明した。現在は、工程制御や製造業務全般にAIを積極的に導入しているという。
韓国メディアが12日に報じたところによると、サムスン電子のSystem LSI事業部は、カスタムSoCの機能検証や半導体プロジェクト初期段階のソフトウエア開発に、米AI開発のAnthropic(アンソロピック)のLLM(大規模言語モデル)「Claude」を導入した。
SoC(カスタムシステム・オン・チップ)の検証工程では、従来1カ月以上かかると見込まれていた作業が、わずか2日で完了した。社内評価では、作業効率が約15倍に向上したという。
研究開発から量産までAIを浸透
今年に入ってからのサムスン電子の動きを振り返ると、同社の半導体部門であるデバイスソリューション(DS)部門は3月、アナログチップやロジックチップの設計工程にAIを導入したと明らかにした。一部のモジュールでは、設計期間が直接50%短縮されたという。
5月には、社内のプログラマーを対象にClaudeのAIコーディングツール「Claude Code」の利用を開始した。その後、同ツールを半導体分野の専門的な研究開発にも拡大した。
さらに同社は、GeminiやChatGPTなど外部の生成AI製品も順次導入し、グループ全体の「AIトランスフォーメーション」戦略を全面的に推進している。AI技術を、傘下の全子会社における研究開発、生産、マーケティング、技術運用など、事業チェーン全体へ浸透させる構えだ。
7月には、サムスンのメモリ部門が、AIの活用によってプロセス・デザイン・キット(PDK)の適合作業と改良にかかる期間を95%超短縮したと発表した。現在は量産向けの研究開発に大規模に導入されている。
先端プロセスと先端パッケージングは、半導体製造の複雑さを大きく高めている。先端工程や3Dパッケージングの導入により、生産ラインで扱うデータ量とコスト圧力は急増した。これが、AIを半導体スマート製造に不可欠な技術へと押し上げている。
産業調査報告書によると、半導体製造にAIを導入する目的には、歩留まりの最適化、品質管理、画像検査、予知保全などがある。世界の半導体産業が急成長するなかで増大するデータと、その処理需要に対応する狙いだ。
半導体製造へのAI導入にはなお課題
ただし、半導体製造へのAIの組み込みは、他の産業に比べて容易ではない。老朽化したシステムによるデータの分断、部門間の壁、業界専門人材の不足など、複数の課題が存在する。企業規模でAIを導入・運用するための完全な運用モデルが整っていないことも問題となる。
極めて高い精度が求められる半導体製造では、ウエハーの流動生産を開始した後に設計上の欠陥をさかのぼって修正することは、ほぼ不可能だ。
韓国メディアによると、ある業界関係者は、「大規模モデルを駆動するエージェントは計算効率が非常に高い。しかし、制御を誤れば重大な事故につながる可能性がある。長期的には、AIが反復的な手作業を大幅に代替し、開発期間全体を短縮することになる。その結果、エンジニアは目標設定と最終検証に集中できるようになる」と述べた。




