中国GPUの曦望智能、233億円超を調達しユニコーンに

中国の国産フルスタック自社開発AI(人工知能)演算チップ開発の杭州曦望智能(Sunrise、浙江省杭州市)は20日、10億元(約233億円)超の新ラウンドの資金調達を完了したと発表した。今回の調達資金は主に、次世代推論GPU(画像処理半導体)「啓望S3」の大規模量産・出荷、フルスタックソフトウェアエコシステムの構築、およびS4・S5後続チップの研究開発(R&D)に充てられる。
曦望は昨年7月初旬、すでに約10億元の資金調達を完了していた。当時のラウンドには三一集団傘下の華胥基金・第四範式・游族網絡・北京利爾・松禾資本・海通開元など複数の機関が参加した。分割独立からわずか1年余りで、曦望は累計7ラウンドの資金調達を完了し、総調達額は約40億元に達した。これにより曦望は国内初の評価額100億元超の純推論GPU専業ユニコーン企業となった。
曦望は公式プレスリリースで、2026年は業界から「AIエージェント元年」として広く認識されていると指摘した。大規模言語モデル(LLM)が「会話できる」から「思考し、実行できる」デジタルワーカーへと進化するにつれ、推論需要は爆発的な成長を迎えている。「NVIDIA GTC 2026」ではAI産業が「推論の実装・エージェントの普及」という新時代に全面的に突入したことを宣言し、「1ワット(W)当たりのトークンスループット」をAI時代の中核的競争力として定義した。これは曦望が創業当初から定めてきたコア戦場と高度に一致している。
「AIコンピューティングインフラの重心はすでに完全に転換した」と曦望の董事長(会長)である徐冰氏は述べた。「26年のAI推論コンピューティング需要は学習需要の4〜5倍に達し、推論コンピューティングのレンタル価格は半年で約40%上昇した」と語った。
曦望の前身は中国の画像認識大手、商湯科技(SenseTime、香港)の大型チップ部門であり、24年末に分割独立して高性能GPUおよびマルチモーダルシナリオ向けAI推論チップの研究開発と商業化に特化した。研究開発チームは8年間の技術蓄積・20億元の研究開発投資・2世代の量産チップによるエンジニアリング検証を経て、国産GPU代替の中核的な存在となっている。現在チーム規模は400人に達し、研究開発人員の比率は80%超、エヌビディア・AMD・ファーウェイ海思などの国内外トップチップ企業出身の中核人材が集結しており、修士以上の学歴保有者が80%超を占める。
製品ラインについては、すでに量産中の曦望S1・S2と、間もなく量産予定のS3が主力となっている。S1はクラウドおよびエッジ向けの視覚推論専用チップで、出荷数はすでに2万枚を超えた。S2は大規模モデル推論向けのGPGPU製品で、7ナノメートル(nm)プロセスを採用し、米半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)のCUDAエコシステムと互換性を持ち、性能はエヌビディア「A100」に匹敵する。命令セット・GPGPUアーキテクチャ・演算子開発・コンパイラツールチェーンを含むすべてのコア技術を完全自社開発している。
2026年1月に正式発表された次世代フラッグシップ製品「啓望S3」は、国内初のLPDDR6搭載かつLPDDR5X互換の推論GPUだ。高性能学習GPU向けのHBMビデオメモリ路線を盲目的に踏襲するのではなく、エージェント推論の本質的な需要に基づき、AIコアの演算アーキテクチャからメモリIOシステムまでを全面的に再設計している。啓望S3は前世代S2比で推論性能が5倍向上し、トークンコストの90%削減を目標とする。大規模モデル推論において計算量全体の90%以上を占めるGEMMとFlash Attentionの2つのコア演算子の利用率をそれぞれ約99%と98%まで引き上げており、公称演算性能のほぼすべてが有効スループットに変換される。
啓望S3はまた、LPDDR6メモリインターフェース・高速SerDes+SUE融合インターコネクト技術・PCIe Gen6インターフェースという3つの先進高速インターフェース技術を革新的に統合し、推論時代における最重要ボトルネックであるメモリとIOの両面からエージェントの3大課題を解決している。FP16からFP4までのフルチェーン低精度演算をネイティブサポートし、DeepSeek V3/R1などの主流モデルでほぼ無損失のFP4推論を実現、スループットはFP16比で3〜4倍向上する。
「啓望S3は単純な性能アップグレードではなく、AI推論のコスト曲線そのものの再構築だ」と徐冰氏は述べた。「私たちの目標は推論コストを『100万トークンあたり1分(0.01元)』まで引き下げ、AIを電気や水道のような普遍的なインフラにすることだ」と語った。
今回の資金調達を受けて、2026年の曦望は「実装・実現・成長」を核心原則として啓望S3の量産出荷を全力で推進し、国内外の主流大規模モデル・マルチモーダルモデル・エージェントフレームワークとの全面的な互換対応を完了させる。同時に、啓望S4高性能推論GPUと啓望S5セキュリティ制御型推論GPUの技術ロードマップ策定を完了しており、ニアメモリコンピューティング・光電子共同パッケージングなどの先端技術の探索にも継続的に注力していく。




