世界初、沐曦集成など中国チームが「磁性材料AI原子基座モデル」を発表

中国国産高性能GPU(画像処理半導体)の設計を手掛ける沐曦集成電路(METAX、上海市)は、「AI4S(AI for Science)」を軸にした国産GPUの新たな展開を模索している。同社はこのほど、清華大学など複数機関と共同で、磁性材料向けAI(人工知能)原子基座モデルを発表した。広範な温度・圧力領域をカバーする磁性材料AI原子モデルとしては世界初だという。

磁性材料は民生機器や産業用途など幅広い分野で利用され、モーター、変圧器、記憶装置などに不可欠である一方、「材料特性は予測できても実際に作れない」という業界共通の課題を抱えてきた。研究者によれば、磁性データの精度不足、原子と磁気モーメントの結合により純粋な原子モデルでは計算が困難な点、推論計算の遅さやエネルギー発散の問題などが障壁となっている。

例えばネオジム鉄ホウ素(NdFeB)永久磁石の製造では、薄帯鋳造や磁場配向など複数工程があり、温度・圧力・磁場・時間が最終的な微視構造とマクロ特性を左右する。磁気特性は原子スケールからミリメートル級までの多層構造で決まるため、いずれかのスケールで欠陥が生じれば性能に影響が及ぶ。従来のシミュレーション技術では、こうした複雑な温圧環境への適応が難しかった。

今回発表されたモデルは、異なる原子および磁気モーメント構造の進化メカニズムを初めて解明し、それを基に世界初の広温圧域磁性材料データベースを構築した。47種類の合金元素、6000超の磁性合金体系、70万組以上の非平衡・非共線磁性材料データを収録。0~1000K、最大10GPaの広域条件下で、原子配列と磁気モーメント回転を同時に高精度予測できるという。研究チームは、原子レベルでの広域・高精度・高信頼性シミュレーションを実現したと強調する。

同モデルは独自開発のDeltaSPIN、DeepSPIN、TSPIN計算フレームワークに加え、国産ソフトウェアDeepMD-kitやABACUSを融合し、原子・磁気モーメント・分極の一体化シミュレーションを初めて実現。磁性材料分野で欠陥工学の計算シミュレーションを可能にし、計算速度を2桁、精度を4桁向上させた。これにより、新エネルギーや電子情報分野向け次世代高性能磁性機能材料の設計・予測に向けた基盤技術を提供する。

このAI4S分野の進展を支える算力基盤は、沐曦股份のGPUが担う。同社の孫国梁上級副総裁は「国家プロジェクトとして算力コストを共同で負担し、支援している」と述べた。

同社は1月、科学計算と高性能計算向け「曦索X」シリーズを発表。旗艦モデルX206は自社開発GPGPUアーキテクチャ、128GB大容量メモリ、MetaXLinkマルチカード接続技術を備え、材料シミュレーションや気象・海洋解析、生命科学研究などに対応する。ABACUS、CP2K、Lammps、DeepMD-kitなど主流科学計算ソフトと互換性を持ち、自社ソフトスタックMXMACAによりコード再構築なしでの移行を実現した。70万組データセット構築と学習では、高帯域・高安定性GPUにより研究効率が大幅に向上し、「従来1カ月かかった計算が1日で完了する」としている。

米AMDもAI4S分野へ投資

海外大手もAI4S分野への投資を強化している。2025年10月、米AMDは米エネルギー省と提携し、HPEやオラクルなどと総額10億ドル(約1570億円)超を投じ、オークリッジ国立研究所向けに次世代AIスーパーコンピューター「Lux」と「Discovery」を構築すると発表。2026年初稼働予定のLuxはInstinct MI355X GPUとEPYC CPUを搭載し、核融合シミュレーションやがん分子研究などを支援する。

一方、AI4Sは将来性はあるが市場規模は限定的との見方もある。科学計算はFP64高精度演算に依存するのに対し、大規模AIモデルはFP8以下の低精度へ進化しており、高精度対応は設計・エコシステム・製造コスト増を招く可能性がある。米NVIDIA(エヌビディア)のGPU「B300」シリーズがFP64ユニットを縮小し低精度演算へ資源を傾斜していることも、業界の方向性を示す。

これに対し孫氏は「当社の計算ユニットは独立しており、高精度対応が低精度性能を犠牲にすることはない」と強調。「曦索Xシリーズは科学計算と大規模モデル推論を性能低下なく同時に支援できる」としている。

当磁性材料遇到AI:沐曦股份联合清华大学发布“磁性材料·AI原子基座模型”

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