米国スタートアップSubstrate、新型リソグラフィーを開発

米半導体製造装置のスタートアップ、Substrate(サブストレート)はこのほど、自社が開発した半導体製造装置が、現在世界で最も先進的なリソグラフィーに匹敵する性能を備えていると発表した。
同社によれば、この新装置は12ナノメートル(nm)のパターンを形成する能力を持ち、最新のHigh-NA EUV装置に匹敵する性能を実現した。Substrateは外部企業の光刻技術や知的財産を使用しておらず、「他の半導体企業と重複しない独自技術を構築した」と強調している。現在、市販の最上位High-NA EUVリソグラフィー装置の価格は4億ドルを超える。
Substrateは2021年の設立。50人のチームを擁し、学界や半導体業界のトップ人材を集めた。メンバーには、1980年代初頭にローレンス・リバモア国立研究所やローレンス・バークレー国立研究所、サンディア国立研究所などでEUV技術の開発に携わった研究者・技術顧問も含まれている。
SubstrateEUVリソグラフィー法の改良を目指している。同社は競争上の理由から詳細を公表していないが、粒子加速器を用いて短波長のX線から光源を生成する仕組みを採用しており、より狭い光線を得ることができるという。米国の国立研究所やサンフランシスコの自社工場で実証実験を行い、高解像度画像で性能を確認したという。
米国内に半導体工場を建設へ
同社のジェームズ・プラウド最高経営責任者(CEO)によると、この装置はSubstrateが掲げる大規模計画の第一歩だ。計画の目的は、米国内で半導体のファウンドリー(受託製造)事業を構築し、最先端のAI(人工知能)チップ製造分野で台湾積体電路製造(TSMC)と競合することにある。プラウド氏は、競合他社よりも大幅に低コストで製造装置を生産することで、チップ製造コスト全体を劇的に削減することを目指している。
プラウド氏は「我々の最初の目標は、米国で最高品質のウエハーを最も低い価格で大量生産できるようにすることだ」と語り、「多くの業界関係者は不可能だと言うが、歴史がそれを否定してきた」と強調した。Substrateは米国内に半導体工場を建設し、カスタムチップの製造を行う計画であり、数年以内に同社の装置が米国内の工場で稼働を開始する可能性があるという。
もしこの構想が実現すれば、米国経済と国家安全保障に大きな影響を与える。トランプ米大統領は、半導体製造の国内回帰を国家戦略の中核に据えており、米政府は最近、Intel(インテル)株の取得にも動いた。かつて業界をリードしたインテルは、製造技術でTSMCに遅れを取っている。
Substrateはこれまでに、米中央情報局(CIA)が支援する非営利機関In-Q-TelやGeneral Catalyst、Allen & Co、Long Journey Ventures、Valor Equity Partnersなどから総額1億ドル(約154億円)の資金を調達し、企業評価額は10億ドルを超えた。
困難な挑戦
ただ同社の挑戦は非常に困難だ。リソグラフィー技術は高い精度を要求される分野で、大手企業でも容易に実現できるものではない。現在、極端紫外線(EUV)リソグラフィー技術を用いた複雑な装置を量産できる企業は、オランダのASMLが唯一。
市場調査会社のアナリストは「Substrateがチップ製造コストを大幅に下げることに成功すれば、その影響はSpaceXがロケット打ち上げコストを下げて宇宙開発を加速させたのと同様の波及効果をもたらすだろう」と述べている。TSMCと肩を並べる先端製造プロセスを確立するには、数十億ドル規模の投資が必要であり、インテルや韓国サムスンでさえ技術の完成に苦戦している。現在、最新鋭の半導体工場を建設するには150億ドル以上が必要とされ、運用にも高度な専門技術が求められる。
プラウド氏によれば、Substrateは現時点で政府の直接支援を受けていないが、ラトニック米商務長官ら政府関係者が同社の取り組みに関心を示しているという。



